Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
胎児異常

(S674)

診断および治療方針決定に苦慮したsirenomeliaの一例

A case of sirenomelia which was difficult to diagnose and decide treatment strategy

永井 立平

Ryuhei NAGAI

高知医療センター産科

Obstetrics, Kochi Health sciences Center

キーワード :

【はじめに】
Sirenomeliaは100000分娩に1例の頻度で発生し,下肢形成異常,腎形成異常,鎖肛など下半身の異常や肺低形成を伴うことが多いとされる稀な疾患である.近年ではその形態的特徴と超音波検査機器の性能向上およびMRIや3DCTなど新しい胎児診断技術の進歩により胎児期に診断される症例が増えている.子宮内胎児死亡に至る症例が多く,生産となった場合でも生命予後不良な疾患とされる一方で長期生存の報告もあり児の予後推定は必ずしも容易ではない.治療方針決定に苦慮したsirenomeliaの症例を経験したので報告する.
【症例】
24歳,初産婦,妊娠15週の妊婦健診時に超音波検査で羊水過少と胎児単一臍帯動脈,下肢形態異常を指摘され16週3日当院へ紹介受診となった.当院での超音波検査では前医での所見に加え胎児後頭部に脳瘤を認めた.両側腎動脈と思われる腹部大動脈から左右に分岐する動脈血流を認めたが羊水過少の影響もあり胎児腎臓は同定できなかった.また胎児下半身に大腿骨と思われる長管骨を1本しか確認出来なかったが,左右の同定および対側の欠損を断定出来る画像を得ることができなかった.SirenomeliaやVACTERL連合などを疑い,より解像度の良い超音波画像を得るために羊水注入を行うことを提示し当初は検査を希望されていた.しかし児の多発形態異常および脳瘤の予後についてカウンセリングを繰り返すうちに次第に夫婦の意見に変化が認められ,悩まれた末に妊娠の継続を断念されたため羊水注入およびそれ以上の超音波検査は施行できなかった.出生後の児は肉眼的にsirenomeliaであり,病理解剖で両腎欠損,癒合した下肢・大腿,鎖肛を認めた.副腎は両側に確認され,両側腎動脈と考えていた動脈は両側副腎への血流だった可能性が考えられた.後頭部では頭蓋骨の1cm程度の癒合不全を認め同部位から小脳の脳瘤内への脱出を認めた.
【考察】
胎児が小さく羊水過少を伴う場合,本症例のように胎児形態異常が正常と著しく異なり鑑別しやすいことが予想されるにもかかわらず通常の超音波検査方法では確定診断が難しかった.特に下肢の同定は難しく胎児由来の羊水へ移行していく妊娠15週頃までには本症例をスクリーニングで否定しておく必要があると考えられた.また腎無形性および低形成症例では生命予後不良とされるが,解像度が悪いため腎臓の同定が困難である可能性を否定できず予後の推測に苦慮した.本症例ではもう一つの予後不良因子である脳瘤を認めたため妊娠中断の判断に至ったが,一般に予後不良が予測される疾患においても予後に直結する所見が確認できない場合,特に妊娠22週未満では診断確定と病名告知には慎重になる必要がある.