出田 雅子, 久保 敦司, 盛田 真弘, 野田 晃世, 小川 力, 松中 寿浩, 玉置 敬之, 柴峠 光成

Masako IZUTA, Atsushi KUBO, Masahiro MORITA, Teruyo NODA, Chikara OGAWA, Toshihiro MATSUNAKA, Hiroyuki TAMAKI, Mitsushige SHIBATOGE

高松赤十字病院消化器内科

Gastroenterology, Takamatsu Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
膵腫瘤に対する超音波内視鏡下穿刺吸引法（endoscopic ultrasonography-guided fine needle aspiration:EUS-FNA）は昨今十分に普及しており，原発性膵腫瘍だけでなく転移性膵腫瘍の報告も少なくない．今回造影CTで膵頭部に多血性腫瘍を認め，膵腺房細胞癌，膵神経内分泌腫瘍，転移性膵腫瘍を疑いEUS-FNAを施行し，平滑筋肉腫膵転移と診断された症例を経験したので報告する．
【症例】
64歳女性（既往歴・現病歴）8年前に子宮平滑筋肉腫（IB期）に対し単純子宮全摘術，両側付属器切除術を施行された．4年前にCTで左下葉結節を認め，胸腔鏡下左下葉部分切除術にて平滑筋肉腫の転移と診断された．その後，本人の希望により他院で免疫療法を継続していたが，3年前より肺結節，左腎上極結節，脾結節を認め，徐々に増大傾向にあった．本年10月の造影CTで膵頭部に45mm大の結節と肝内胆管拡張を認め，精査加療のため当科紹介となった．（検査）
【血液検査】
WBC2810/mL，Hb11.4g/dl，PLT19.5x104/ul，Alb4.6g/dl，T-bil1.0mg/dl，ALP191IU/L，AST/ALT 20/14IU/L，γGTP63IU/L，AMY59IU/L，リパーゼ42U/L，トリプシン234ng/mL，CEA1.7ng/mL，CA19-9 8.5U/ml，DUPAN2 25U/mL以下，Span-1 13.2U/mL（造影CT）膵頭部に50mm大の軟部濃度の腫瘍を認め，動脈相で強く均一に濃染され，門脈相，平衡相でwash outされた．総胆管は圧迫され狭窄し，総胆管から肝内胆管に拡張を認め，主膵管拡張も認めた．（MRI）膵頭部にT1低信号，T2高信号，DWI高信号の50mm大の腫瘍を認めた．（造影US：当院では，造影USの肝臓以外への使用に関しては当院倫理員会（高松赤十字病院12-021）で承認済みである．）TOSHIBA Aplio500使用．膵頭部に50mm大の内部不均一な低エコー腫瘤を認め，内部に豊富な血流を認めた．動脈優位相で腫瘍は均一に強く濃染され，門脈優位相でも濃染は遷延し，後血管相では淡いdefectを呈し，完全なdefectには至らなかった．
【経過】
閉塞性黄疸による肝胆道系酵素の上昇が予想され，ERCPを施行し，総胆管内に胆管ステントを留置した．診断目的にCook precore 20G FNA針を用いてEUS-FNAを施行した．病理結果は，核濃染と大小不同の著明な類縁系から短紡錘形の異形細胞を認め，α-SMA陽性，h-caldesmon陽性，，Desmin陽性であり，経過から子宮平滑筋肉腫膵転移と診断した．
【考察】
平滑筋肉腫は組織像から原発部を同定することは困難とされているが，本症例ではEUS-FNAにて初回再発時，局所再発手術時と類似した病理組織所見が得られたこと，経過中に多数の臓器への転移を認めていたことから，子宮平滑筋肉腫の膵転移の診断に至った．膵の多血性腫瘍の鑑別として，膵腺房細胞癌，膵神経内分泌腫瘍，転移性膵腫瘍，膵漿液性のう胞腺腫（solid type），SPNがあげられ，多血性転移性膵腫瘍では腎細胞癌が多く，その他には肺癌，乳癌，大腸癌も認められる．稀ではあるが平滑筋肉腫も鑑別にあげる必要があると思われた．
【結語】
EUS-FNAで診断し得た子宮平滑筋肉腫膵転移の一例を経験した．