Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 消化器
膵臓

(S672)

閉塞性膵炎を伴う膵体部癌2例の水浸下超音波検査像(後方散乱の原因についての考察)

Fantom Ultrasonography of 2 Pancreas Body Cancer Cases with obstructive pancreatitis

若杉 聡, 梅木 清孝, 小宮 雅明, 金久保 雄樹, 伊藤 正範, 鶴岡 尚志, 勝又 英明, 丸山 勝, 佐藤 三佐子, 石田 秀明

Satoshi WAKASUGI, Kiyotaka UMEKI, Masaaki KOMIYA, Yuuki KANAKUBO, Masanori ITOU, Hisashi TSURUOKA, Hideaki KATSUMATA, Masaru MARUYAMA, Misako SATOU, Hideaki ISHIDA

1千葉西総合病院消化器内科, 2亀田総合病院超音波検査室, 3天王台消化器病院画像診断部(超音波検査法フォーラム), 4新宿健診プラザ健診部(超音波検査法フォーラム), 5国家公務員共済組合連合会三宿病院診療技術部(超音波検査法フォーラム), 6長谷工クリニック超音波検査室(超音波検査法フォーラム), 7東京逓信病院臨床検査科(超音波検査法フォーラム), 8成田病院臨床検査科, 9秋田赤十字病院消化器内科

1Department of Gastroenterology, Chibanishi General Hospital, 2Ultrasonography Room, Kameda Medical Center Hospital, 3Department of Radiology, Tennohdai Digestive Disease Hospital, 4Department of Health Check, Shinjuku Kenshin Plaza, 5Department of Medical Technology, Mishuku Hospital, 6Ultrasonography Room, Haseko Clinic, 7Department of Medical Technology, Tokyo Teishin Hoapital, 8Department of Medical Technology, Narita Hoapital, 9Department of Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【症例1】
67歳,男性.膵体部癌の術前検査として腹部超音波検査が行われた.膵体部に22mm×9mmの類円形低エコー結節を認めた.境界やや不明瞭,内部はやや不均一で,後方エコーは不変であった.尾側主膵管は軽度拡張し,病変境界部で途絶していた.病変尾側の膵実質が頭部側の膵実質より低エコーであった.腹部CTでは病変は周囲膵実質と等濃度で境界不明瞭な結節であった.造影早期相では周囲より軽度低濃度で,造影後期相では辺縁部が造影され,晩期相では全体が不均一に造影された.MRCPでは病変部で主膵管が途絶し,尾側主膵管は軽度拡張していた.超音波内視鏡検査では膵体部に20mm×11mmの類円形低エコー結節を認めた.境界明瞭粗造で,尾側境界は不明瞭であった.内部は不均一で後方エコーは不変であった.尾側主膵管は拡張し,病変境界部で途絶していた.病変頭部側の膵実質は高エコーであったが,尾側の膵実質は低エコーであった.閉塞性膵炎を伴う膵体部癌と診断し,膵体尾部切除術を施行した.術後の標本に水浸下超音波検査を行った.標本の画像では,腫瘍と頭部側膵実質と尾部側膵実質がほぼ同じエコーレベルになった.病理組織では膵体部癌と診断された.病変の頭部側は正常な腺房細胞癌が見られたが,尾側膵組織は線維化が強かった.
【症例2】
73歳,女性.膵癌の術前検査として超音波検査を依頼された.腹部超音波検査では膵体部に28mm×21mmの類円形低エコー結節を認めた.境界不明瞭,内部不均一 後方エコーは不変であった.近傍に接するように18mm×18mmの分葉形の嚢胞像を認め,貯留嚢胞を疑った.尾側主膵管は5mmと拡張し,蛇行していた.頭部側膵実質は高エコーであったが,尾側膵実質は低エコーであった.腹部CTでは病変は境界不明瞭な不整形低濃度像として指摘された.造影では周囲より低濃度で,造影効果に乏しかった.閉塞性膵炎を伴う膵体部癌の診断で膵体尾部切除術が施行された.標本を水浸下超音波検査で観察すると,腫瘍,膵体部,膵尾部のエコーレベルが同等になり,病変の頭部側と尾部側のエコーレベルの差がなくなった.病理組織では膵体部癌と診断された.病変頭部側の膵実質は腺房細胞が保たれていたが,病変尾部側の膵組織は線維化が強かった.
【考察】
膵体部癌により尾側主膵管が閉塞すると,尾側膵実質に炎症が生じることは知られている(閉塞性膵炎).この場合,超音波検査では尾側膵実質は低エコー化する.われわれは,膵体部癌に閉塞性膵炎を伴うことが多く,それにより腫瘍が指摘しにくいこともあると報告してきた.今回,閉塞性膵炎を伴う膵体部癌に水浸下超音波検査を行ったところ,術前の画像にくらべて頭部側と尾部側のエコーレベルに差がなくなった.組織のエコーレベルは超音波の後方散乱によることが知られている.術後の標本で頭部側の膵実質の後方散乱が低下したか,尾部側の後方散乱が上昇することで,両者のエコーレベルが同等になったと考えた.今回の検討では標本の水浸下超音波検査は,ホルマリン固定後に行った.ホルマリン固定による脱水で水分がなくなったためか,手術により血流が低下したためと推察した.後方散乱の原因を考察する上で貴重な2症例であった.
【結語】
閉塞性膵炎を伴った膵体部癌の2例に水浸下超音波検査を行った.術前の超音波画像にくらべて,水浸下超音波画像では病変尾部側と頭部側のエコーレベルの差が少なくなった.後方散乱の原因を考察する上で貴重な症例と考えた.