Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 消化器
膵臓

(S670)

当院で経験した男性の膵Solid-pseudopapillary neoplasm 4切除例

Four male cases of resected solid-pseudopapillary neoplasm of the pancreas

樋口 真希, 小山 里香子, 浦崎 裕二, 田村 哲男, 河野 優子, 今村 綱男, 井上 淑子, 橋本 雅司, 石綿 清雄, 竹内 和男

Maki HIGUCHI, Rikako KOYAMA, Yuji URASAKI, Tetsuo TAMURA, Yuko KAWANO, Tsunao IMAMURA, Yoshiko INOUE, Masaji HASHIMOTO, Sugao ISHIWATA, Kazuo TAKEUCHI

1虎の門病院臨床生理検査部, 2虎の門病院消化器内科, 3虎の門病院消化器外科

1Clinical Phisiological Laboratory, Toranomon Hospital, 2Gastroenterology, Toranomon Hospital, 3Digestive Surgery, Toranomon Hospital

キーワード :

【はじめに】
膵Solid-pseudopapillary neoplasm(以下SPN)は,低悪性度の膵上皮性腫瘍である.出血・壊死を繰り返す事で充実性部分が嚢胞変性をきたす腫瘍であり,腫瘍辺縁や内部に石灰化を伴う事も特徴の一つである.主に若年女性の体尾部に好発するとされ,男性例は比較的稀である.今回我々は,これまでに当院で経験した男性の膵SPN切除例,4症例について超音波(以下US)所見を中心に検討したので報告する.
≪症例1≫31歳,検診のCTで膵嚢胞を指摘され紹介受診.USでの腫瘍径は54mm大で膵尾部に存在した.形状は境界明瞭な類円形,内部は膵実質と等エコーを呈する充実部分に嚢胞成分が混在し,石灰化は認めなかった.カラードプラで拍動性血流シグナルを検出した為,膵神経内分泌腫瘍(以下p-NET)も鑑別にあがった.
≪症例2≫44歳,検診の上部消化管造影検査で異常陰影を指摘されたが5年程放置.背部鈍痛を主訴に当院受診.USで膵尾部端に径30mm大の腫瘍を認めた.辺縁に粗大な石灰化を伴い,腫瘍の形状・内部エコーの評価が困難であった.
≪症例3≫60歳,上部消化管内視鏡検査で指摘された胃壁外性圧排を契機に,CTで膵体部遠位側に腫瘍が指摘された.USでの腫瘍径は37mm大で形状は境界明瞭,不整形で,内部は低エコーを呈し,石灰化を伴っていた.嚢胞成分は認めなかった.
≪症例4≫47歳,人間ドックUSで指摘.USでの腫瘍径は13mm大で膵体部に存在.形状は境界明瞭な類円形,内部は低エコーを呈する充実性で,中心部に石灰化を伴っていた.嚢胞成分は認めなかった.尾側膵管が軽度拡張していた.
【結果】
1986~2016年に当院で外科的切除したSPN症例は13例,男性4例,女性9例であった.男性例の平均年齢は45.5歳(31~60歳),腫瘍部位は体部2例,尾部2例.平均腫瘍径は30mm(10~50mm)であった.SPNの特徴的なUS所見である石灰化を伴う症例は75%(3/4例),嚢胞成分を指摘できた症例は50%(2/4例)であった.一方,女性例の平均年齢は30.2歳(18~52歳),平均腫瘍径は58.8mm(15~150mm),石灰化を伴う症例は67%(6/9例),嚢胞成分を指摘できた症例は88.9%(8/9例)であった.
【考察】
男性例は女性例と比較して,年齢が高齢で腫瘍径が小さい傾向にあり,既知の報告と一致した.女性で嚢胞成分の指摘できなかった症例は11.1%であり,男性が50%だった事を考えると,男性には嚢胞成分を認めない症例が多い傾向にあった.これは腫瘍径が小さい事とも関連があると考えられる.また腫瘍の充実部分にカラードプラにて明らかな血流シグナルを検出できた症例は25%(1/4例),造影CTで染影効果を認めた症例は50%(2/4例)だった.術前診断でSPNを鑑別疾患として挙げられていた症例は3例だった.いずれの症例も充実部分の染影効果や嚢胞成分,石灰化などからp-NETも鑑別疾患として挙げられていた.
【結語】
膵腫瘍の超音波診断では,男性であっても嚢胞成分,石灰化などの特徴があれば,SPNを鑑別診断に挙げるべきである.