Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 消化器
消化器その他2

(S667)

造影腹部超音波検査を行った,腹腔内臓動脈瘤破裂2症例の検討

Contrast Ultrasound Examination, Two Cases of Abdominal Visceral Aneurysms Rupture

伊藤 将倫, 西尾 雄司, 竹田 欽一, 荒川 恭宏, 奥藤 舞, 室井 航一, 鈴木 誠治, 今泉 延, 木下 智恵美, 中村 妙

Masatsugu ITO, Yuuji NISHIO, Kinnichi TAKEDA, Yasuhiro ARAKAWA, Mai OKUTOU, Kouichi MUROI, Seiji SUZUKI, Tadashi IMAIZUMI, Chiemi KINOSHITA, Tae NAKAMURA

1名古屋鉄道健康保険組合名鉄病院放射線科, 2名古屋鉄道健康保険組合名鉄病院消化器内科

1Department of Radiology, Meitetsu Hospital, 2Department of Gastroenterology, Meitetsu Hospital

キーワード :

【はじめに】
腹腔内臓動脈瘤は比較的まれな疾患であり,いったん破裂すれば死亡率の高い疾患と言われている.また,治療には手術や経カテーテル的動脈塞栓術(以下:TAE)が選択される.
今回,腹腔内臓動脈瘤破裂に対して,TAE前後に造影腹部超音波検査(以下:CEUS)を施行した2症例を経験したので報告する.なお,本症例は,当院倫理員会承認の上,十分なインフォームドコンセントを行い患者に同意が得られたため施行した.
【使用機器・設定】
GE Healthcare Japan社製 LOGIQE9.造影modeは,ルーチンScanに用いるPhase inversion harmonic法(B‐mode法)のMI値を0.2~0.4に設定したmodeを使用し,超音波用造影剤ソナゾイドは,推奨量の半量を経静脈性に投与した.
【症例1】
70歳代男性.自己免疫性慢性膵炎にて膵頭十二指腸切除後で経過観察中であった.突然の心窩部痛にて救急外来を受診.腹部単純CT検査にて急性膵炎および膵仮性嚢胞として入院となった.翌朝,激しい心窩部痛を認めたため腹部超音波検査を施行した.腹部超音波検査では,膵体部付近に55mm大の中心部に無エコーを伴う充実性腫瘤として描出された.カラードプラ検査では無エコー域に一致して乱流を伴う血流シグナルを認めた.引き続き行ったCEUSでは,カラードプラ検査よりも明瞭かつ詳細に無エコー域に流入する血流シグナルが描出され,脾動脈からの出血が疑われた.緊急TAE最中も激しい心窩部痛を繰り返し,TAE中に施行したCEUSで動脈瘤内に流入するシグナル低下を得られたが,完全な動脈瘤塞栓術は施行できず緊急手術となった.
【症例2】
60歳代女性.突然の右季肋部痛にて救急外来を受診.単純CT検査にて肝表面および腹腔内に血腫を疑うような,腹水よりCT値の高い液体様貯留を認めた.腹部造影CT検査にて,前上膵十二指腸動脈瘤からの出血が疑われた.救急外来で施行した腹部超音波検査では,腸間膜と血種様エコーが混在したモザイクな領域内に楕円形の低エコー像を認めた.引き続き施行したCEUSでは,低エコー像の中心部に動脈瘤を疑うような血流シグナルが得られた.緊急TAEにてコイル塞栓術を施行し,TAE後のCEUSでも動脈瘤を疑うような血流シグナルが得られなかった.
【考察】
血管病変はより高分解能かつ高フレームレート画像が必要であり,カラードプラ法にて腹部領域の血管を評価する場合,モーションアーチファクトが取得画像に大きく影響を及ぼす.特に緊急時など,呼吸停止が困難な場合は,カラードプラ画像のアーチファクトが軽減できず診断に苦慮することがある.また,通常用いられる造影ソフトは,組織抑制のためbackgroundが暗くかつ通常観察modeより分解能やフレームレート低下しており,標的となる病変を見失うことも多い.しかし,今回使用した造影modeは,ルーチンScanに用いるPhase inversion harmonic法(B‐mode法)のMI値を0.2~0.4に設定したmodeであり,高分解能で高フレームレートの微細な血流画像が得られるmodeである.緊急かつ呼吸停止困難症例であった本2症例でも,動脈瘤内の血流評価が十分に行える手法であった.
【結語】
ルーチンScanに用いるPhase inversion harmonic法(B‐mode法)のMI値を0.2~0.4に設定した造影modeは,血管病変でも診断に有用な手法であった.