Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 消化器
消化器その他1

(S665)

左上腹部痛で発症した後腹膜リンパ管腫の1例  

Retroperitoneal lymphangioma manifested by severe abdominal pain

宮部 賢, 石田 秀明, 長沼 裕子, 大山 葉子, 俵谷 伸, 星野 孝男, 渡部 博之

Ken MIYABE, Hideaki ISHIDA, Hiroko NAGANUMA, Youko OOYAMA, Shin TAWARAYA, Takao HOSHINO, Hiroyuki WATANABE

1秋田厚生医療センター消化器内科, 2秋田赤十字病院超音波センター, 3市立横手病院消化器内科

1Gastroenterological Medicine, Akita Kousei Medical Center, 2Ultrasonography Center, Akita Red Cross Hospital, 3Gastroenterological Medicine, Yokote Municipal Hospital

キーワード :

リンパ管腫は孤立した拡張リンパ腔の集合からなる比較的稀な良性腫瘍で全身どこにでも発生しうるが,その中では後腹膜由来のものは低頻度である.今回,我々は,その1例を経験したので超音波所見を中心に報告する.
使用診断装置:東芝社製:AplioXG.で超音波造影剤はソナゾイド(第一三共社)を用い,造影方法は通常の肝腫瘍のそれに準じた.
【症例】
37歳女性.数日前から左上腹部痛有り.次第に増強し当院救急外来受診.体温38.6℃,採血データ上,WBC 16100 /μl,CRP 9.05 mg/dlと炎症所見を認めた.CT上,左上腹部に16cm大の多房性嚢胞性病変を認め,後腹膜膿瘍を疑い精査加療目的に入院.なお,8年前に骨盤内炎症性疾患の既往があり,この際のCTでは本病変は指摘されていない.超音波上,この病変は,a)脾臓,膵臓,左腎臓に囲まれた,b)多房性嚢胞性病変で,嚢胞径は数mm~数cmと多彩であるが,c)嚢胞壁は全て薄く,d)病変内に充実性箇所はなく,e)造影超音波上どの時相でも薄壁のみが造影された.MRI,FDG-PET等も合わせ,良性嚢胞性病変を強く疑ったが有症状例で病変に増大傾向があることから第31病日に腫瘤摘出術を施行した.後腹膜リンパ管腫と最終診断された.術後経過良好で再発所見なし.
【考察】
後腹膜リンパ管腫の1例について超音波所見を中心に報告した.最終診断は免疫染色を加えた組織学的検索によるが,超音波所見もかなり特徴的(上記(a)-e))で術前に本疾患を十分疑う事が可能である.特に,壁が均一に薄いことが後腹膜腫瘍との鑑別点と思われる.なお文献的には,後腹膜リンパ菅腫は一般には無症状で有るが,稀に二次的な出血や感染により有症状となる.本例も,組織学的に確認しえなかったが一過性にそのような事態があったものと考えられる.十分な記載がある後腹膜リンパ管腫有症状例は本邦では,本例も加え4例で,症状軽微の76歳女性を除くと,全例30-40歳代で病変は巨大(>10cm)単発で腫瘤摘出術後症状軽快している.
【まとめ】
後腹膜リンパ管腫は比較的まれではあるが,画像所見,特に嚢胞性病変の診断に優れている超音波検査が病変の質的診断に有用と思われた.
【文献】
Tarcoveaunu E, et al. Laparoscopic treatment of intraabdominal cystic lymphangioma.Chirurgia.2016: 111: 236-41