Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 消化器
消化器その他1

(S664)

大腸間膜リンパ管腫の2例-文献的考察も加えて

Lymphangioma of mesocolon:report of two cases and literature review

渡部 多佳子, 石田 秀明, 小松田 智也, 澤田 俊哉, 吉樂 拓哉, 宮内 孝治, 榎本 克彦, 長沼 裕子, 大山 葉子

Takako WATANABE, Hideaki ISHIDA, Tomoya KOMATSUDA, Toshiya SAWADA, Takuya KICHIRAKU, Takaharu MIYAUCHI, Katsuhiko ENOMOTO, Hiroko NAGANUMA, Yoko OHYAMA

1秋田赤十字病院超音波センター, 2秋田赤十字病院消化器外科, 3秋田赤十字病院放射線科, 4秋田赤十字病院病理部, 5市立横手病院消化器科, 6秋田厚生医療センター臨床検査科

1Department of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Digestive Surgery, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Radiology, Akita Red Cross Hospital, 4Department of Pathology, Akita Red Cross Hospital, 5Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 6Department of Medical Laboratory, Akita Kousei Medical Center

キーワード :

【はじめに】
リンパ管腫(Lymphangioma:LPM)は外部リンパ組織と隔別されたリンパ腔の増殖性変化を主体とする比較的まれな良性腫瘍で,全身どこにでも発生する.小児例が多数を占め,頭部や頚部が多い.一方,成人例では腹部羅患例の頻度が増し,脾,腸間膜,後腹膜にみられる.しかしLPMはもともと発生頻度が低く,成人腸管膜LPMはLPM全体の約1%程度である.今回,我々はそのような2例を経験したので超音波所見を中心に報告する.
【使用診断装置】
東芝社製:Aplio 500,Aplio XG
【症例1】
20歳代女性.一過性の下腹部膨満感を主訴に来院.生化学データはほぼ正常で手術歴も含め特記すべき既往歴なし.超音波上,下腹部に約10×12cm大の嚢胞性病変有り.嚢胞内部には僅かに点状エコーが散在し,隔壁様構造も合わせ腸間膜LPMと診断した.CT所見も基本的に同様であった.なお,超音波検査の動画観察下病変は頭尾側に呼吸性移動を示した.上部,下部内視鏡検査では異常所見を認めなかった.捻転などの合併症も考慮し病変摘出術施行.免疫染色(D2-40陽性)も加え,上行結腸間膜由来のLPMと最終診断された.術後経過順調である.
【症例2】
50歳代男性.一過性の下腹部膨満感を主訴に来院.生化学データはほぼ正常で手術歴も含め特記すべき既往歴なし.超音波上,下腹部に12×12cm大の嚢胞性病変有り.嚢胞内部には僅かに点状エコーが散在し,隔壁様構造も合わせ腸間膜LPMと診断した.この例でも,病変の摘出術が施行され,免疫染色(D2-40陽性)も加え,S状結腸間膜由来のLPMと最終診断された.なお,この例においては,4年前に他の理由でCT検査が施行されretrospectiveに同部に3cm大の病変が確認された.
【考察】
LPMの成因に関しては未だ不明な点が多いが,a)リンパ組織の迷入を主因とする先天性説と,b)腹部外傷や腹部手術に起因するという後天性説に二分される.今回の2例では手術歴も含め特記すべき既往歴は無かったが,症例2にみられたように4年間で病変径が著増していることから後天的に増大したことは事実である.最終診断には摘出した組織の免疫染色(D2-40陽性)などが必要である.LPMは脾LPMにみられるように,基本的には無症状のことが多いとされているが,腸間膜のLPMが有症状であるのは,脾LPMに比して自由空間内で可動性が大きく,また径も大きくなるためと考えられた.なお,LPMは特徴的な超音波所見を呈するため診断は容易と思われた.治療に関しては元来良性であるが,捻転や出血などの合併症予防のために病変切除されることが一般的である.最近の文献では,腹部LPM33例中2例に大腸間膜由来のものがあり,ともに横行結腸間膜LPMであったと報告されている.その意味では,今回の上行結腸間膜やS状結腸間膜由来のLPMは稀と思われる.