Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 消化器
消化器その他1

(S664)

小腸間膜に原発した血管脂肪腫の1例

A Case of Angiolipoma occurred Primarily in Mesentery Proper

蓼沼 美砂, 前岡 悦子, 二坂 好美, 小島 祐毅, 有吉 彩, 内藤 美和, 森本 博俊, 佐藤 幸恵, 湯浅 典博

Misa TADENUMA, Etsuko MAEOKA, Yoshimi NISAKA, Yuuki KOJIMA, Aya ARIYOSHI, Miwa NAITOU, Hirotoshi MORIMOTO, Yukie SATOU, Norihiro YUASA

名古屋第一赤十字病院検査部

Department of Clinical Laboratory, Japanese Red Cross Nagoya Daiichi Hospital

キーワード :

【はじめに】
血管脂肪腫は脂肪組織と増生した毛細血管より形成される良性腫瘍で,脂肪腫に外的刺激が加わり,血管増生がもたれされることで発生する.一般に躯幹の皮下組織に好発し,内臓に原発するとこはまれである.今回,我々は小腸間膜に原発した血管脂肪腫を腹部超音波検査で観察した1例を経験したので報告する.
【症例】
43歳女性
【主訴】
下腹部痛
【既往歴】
喘息,42歳時,卵巣嚢腫腹腔鏡下腫瘍核出術
【経過】
2015年11月下腹部痛を主訴に近医を受診したところ腹膜刺激症状を認めたため,当院を紹介された.来院時身体所見は,血圧133/97,脈拍数64/min,腹部は平坦,軟,腸蠕動音は生理的で,腹部全体に圧痛と反跳痛を認めた.血液検査ではCRP0.04mg/dL,白血球数7300/mL,Hb 13.0g/dL,CEA 0.5ng/ml,CA125 19.0U/mlと著変を認めなかった.来院時腹部造影CTでは,左腎腹側に長径55mmの造影効果の乏しい多房性の結節状腫瘤を認めた.しかし下腹部痛は改善し,炎症反応の上昇も認めなかったことから患者は帰宅し,後日精査されることになった.腹部超音波検査(US)では左側腹部に境界不明瞭な長径6cmの高エコー腫瘤を認めた.腫瘤内部に6-12mmの複数の低エコー域を認め,血流シグナルを認めなかった.ソナゾイドによる造影超音波検査では,腫瘤内部の低エコー域の周囲にわずかに造影効果を認めた.腹部MRIでは腫瘤はT1強調画像で低信号を示し脂肪成分の含有が疑われた.FDG-PETでは腫瘤はFDGの高集積を認めなかった.以上の結果より腸間膜あるいは後腹膜に発生したリンパ上皮嚢胞,粘液性腫瘍が疑われ,腹腔鏡にて観察後に切除の方針となった.腹腔鏡では長径約6cmの赤褐色のブドウの房状の不整形,多結節状腫瘤を空腸腸間膜に認めたため,これを含めるように小腸部分切除が行われた.固定後標本割面の肉眼所見では,腫瘤内部は黄色の脂肪を混じた黒褐色の蜂巣状構造を呈した.病理組織学的に大小の血管が脂肪組織に混在して増生し,小嚢胞の多くは凝血塊を満たしていた.免疫染色でHMB45陰性であったため,血管脂肪腫と診断された.
【考察】
血管脂肪腫は脂肪組織と増生した毛細血管より形成される良性腫瘍である.10代後半~20代前半男性の躯幹皮下組織に好発し,内臓原発はまれである.我々が調べ得た限りでは,消化管に発生した血管脂肪腫の本邦報告例は16例のみで,腸間膜原発のものは自験例のみであった.血管脂肪腫では毛細血管は増生するが流入血流量は少ないため,腫瘍内の血液がうっ滞しやすい.USで認めた多房性低エコー域はうっ滞した血液を,高エコー域は脂肪組織を反映したと考えられる.また血液のうっ滞により,造影USでは腫瘍内にほとんど造影効果を認めなかったと考えられる.さらに,腫瘤は脂肪組織を含む腸間膜に発生したため,腫瘤自身の脂肪組織との境界がUS上わかりづらく境界不明瞭となったと考えられる.