Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 消化器
肝臓2

(S663)

肺癌に合併した肝未分化癌の1例

A case of undifferentiated carcinoma of the liver complicated with lung cancer

杉山 博子, 西川 徹, 高橋 礼子, 朝田 和佳奈, 豆谷 果奈, 刑部 恵介, 市野 直浩, 川部 直人, 橋本 千樹, 吉岡 健太郎

Hiroko SUGIYAMA, Toru NISHIKAWA, Ayako TAKAHASHI, Wakana ASADA, Kana MAMETANI, Keisuke OSAKABE, Naohiro ICHINO, Naoto KAWABE, Senju HASHIMOTO, Kentarou YOSHIOKA

1藤田保健衛生大学病院臨床検査部, 2藤田保健衛生大学肝胆膵内科

1Clinical Laboratory, Fujita Health University Hospital, 2Hepato-Biliary-Pancreatic Internal Medicine, Fujita Health University

キーワード :

【はじめに】
肝原発の未分化癌は原発性肝悪性腫瘍の約0.5%程度と極めてまれな腫瘍である.また,早期に血行性・リンパ行性転移を引き起こし予後不良とされている.今回,原発性非小細胞性肺癌と原発性肉腫様肝癌の重複癌が疑われ当院紹介となり,切除標本の病理組織診断にて肝未分化癌と診断された症例について,造影超音波検査の所見を含め報告する.
【症例】
70歳代男性.血痰を主訴に他院を受診し,CTにて右肺と肝臓に腫瘤を認めた.擦過細胞診にて非小細胞性肺癌と診断された.PET-CTにて右肺,気管分岐部,右肺門,肝臓に陽性集積を認め,原発性肺癌,リンパ節転移,肝転移StageⅣの診断にてニボルマブを用いた化学療法が開始された.肝胆道系酵素上昇のため休薬となり,経過観察のために行われたCTにて右肺腫瘤は縮小を認めたものの,肝腫瘤は初診時に径2cmであったが7か月後には径8cmに増大していた.肝腫瘍生検を施行するも確定診断に至らず手術適応外とされたため,セカンドオピニオンを希望され当院紹介受診となった.当院受診時の血液生化学データでは軽度貧血と肝胆道系酵素上昇,炎症反応の上昇を認めたが,腫瘍マーカーであるAFP,CEA,CA19-9,PIVKA-Ⅱはすべて陰性であった.HBs抗原,HCV抗体は陰性であった.
[画像検査]腹部超音波検査では肝右葉に径102x84mm程度の境界明瞭,輪郭不整,内部エコー不均一な塊状の低エコー腫瘤を認めた.Dopplerにて内部に血流signalを認め,血管が貫通するように観察された.造影超音波では早期に腫瘤内が不均一に染影され,中心部にて非染影域を認めた.造影開始2分後には腫瘤内部の染影は低下していた.EOB-MRI検査でも,肝右葉前区域を主体とした径12cm程度の境界明瞭で辺縁に被膜を伴う分葉状腫瘤を認めた.造影早期相で腫瘤辺縁優位に増強効果を認め,腫瘤内部は不均一に軽度増強された.肝細胞相では周囲肝実質と比較し不均一な低~軽度高信号を呈した.以上の画像所見より,肺癌の肝転移や肝内胆管癌が鑑別として挙げられた.
[臨床経過]肝腫瘍の著明な増大があり,肺癌は化学療法による縮小を維持していたため,肝中央2区域切除術が施行された.腫瘍は弾性軟で小児頭大,境界は比較的明瞭であった.病理組織学的には被膜形成は明らかではなく,周囲組織との境界が不明瞭な病変で,内部ではN/C比が高い紡錘形細胞が充実性に増殖しており,所々は線維性組織で分葉状を呈していた.免疫組織学的には異形細胞はCK7(+),EMA(-),hepatocyte(-),CK19(+focal),CK20(-),CD34(-),SMA(-),desmin(-),vimentin(+),calponin(+)であり,明らかな分化方向は不明瞭なことから未分化癌と診断された.
【考察】
肝未分化癌には明確な定義がないため,生検などの病理診断で未分化癌という診断に至ることは極めてまれである.本症例では肺癌に対する化学療法で原発巣が縮小したにもかかわらず肝腫瘍の著明な増大があり,切除され病理診断に至った.造影超音波検査では血管早期相で腫瘤中心部に非染影域を伴う腫瘤の不均一な染影を認め,造影開始2分後には腫瘤内部の染影は低下していた.転移性肝腫瘍や肝内胆管癌,悪性リンパ腫などの可能性が考えられたが,画像による確定診断は困難であった.
【結語】
極めてまれな肝未分化癌に対し造影超音波検査を施行した症例について報告した.