Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 消化器
肝臓2

(S662)

門脈閉塞を伴った肝腫瘍の2例

2 Cases of Liver Tumor with Obstraction of Portal Vein

若杉 聡, 保坂 祥介, 佐藤 晋一郎, 梅木 清孝, 森本 喜博, 小林 亮介, 緒方 賢司, 斎藤 隆明, 田中 みのり, 石田 秀明

Satoshi WAKASUGI, Shousuke HOSAKA, Shinnichirou SATOU, Kiyotaka UMEKI, Yoshihiro MORIMOTO, Ryousuke KOBAYASHI, Kenji OGATA, Takaaki SAITOU, Minori TANAKA, Hideaki ISHIDA

1千葉西総合病院消化器内科, 2千葉西総合病院外科, 3千葉西総合病院病理科, 4千葉西総合病院生理検査室, 5秋田赤十字病院消化器内科

1Department of Gastroenterology, Chibanisihi General Hospital, 2Department of Surgery, Chibanishi General Hospital, 3Department of Clinical Pathology, Chibanishi General Hospital, 4Department of Medical Technology, Chibanishi General Hospital, 5Departement of Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
われわれは,肝腫瘍の近傍の門脈が閉塞している症例をしばしば経験する.しかし,これらを手術すると,門脈閉塞部に癌が浸潤していない(ないし軽度浸潤しているのみである)こともある.今回,われわれは軽度の門脈浸潤をきたした肝内胆管癌症例と,高度に門脈浸潤し,門脈腫瘍塞栓をきたした肝細胞癌症例を経験した.その2症例の画像を対比したので報告する.
【症例1】
73歳,女性.黄疸,肝機能障害のため当院受診した.腹部超音波検査で胆嚢頸部に不整な壁肥厚像を認めた.外側高エコー層に病変が及んでおり,肝十二指腸間膜に浸潤する胆嚢癌と診断した.肝右葉前区域に大きさ約35mmの類円形腫瘤像を認めた.腫瘤は境界明瞭粗造,内部は不均一で軽度低エコー,後方エコーは不変であった.比較的厚く,不整な境界部低エコー帯を認めた.肝内胆管B5の拡張を認め,腫瘤境界部で途絶していた.肝内胆管癌と診断した.門脈右前区域枝は,腫瘤背側で先細り状に閉塞し,その末梢側は描出できなかった.閉塞先端の形態から,門脈は腫瘍により外側から圧迫されていると考えた.造影超音波検査では,門脈内腔は均一に造影された.胆嚢摘出術および肝右葉全区域切除術を施行した.手術の結果,腫瘍は胆嚢癌と肝内胆管癌の重複癌であった.門脈は腫瘤に接して閉塞していた.病理組織では,癌が門脈壁に浸潤していたが,内腔に浸潤していなかった.
【症例2】
78歳,男性.全身倦怠感を主訴に他院受診し,肝右葉に巨大な腫瘤を認めたため,当院外科を受診した.術前に行われた腹部超音波検査では肝右葉を広汎に占める約120mmの分葉形の腫瘤像を認めた.境界明瞭平滑,内部は高エコーと低エコーが混在するモザイクパターンを呈していた.後方エコーは不変ないし軽度増強していた.門脈右前区域枝は周囲肝実質と等エコーであり,拡張していた.門脈は,わずかに残存するグリソン氏鞘の高エコーのみから同定できる状態であった.造影超音波検査では,門脈内腔の低エコー域に不均一な造影効果を認めた.肝細胞癌の門脈腫瘍塞栓と診断した.拡大右葉切除術を施行した.手術の結果,肝細胞癌と診断された.癌組織は門脈壁に高度浸潤し,門脈内腔に腫瘍塞栓を形成していた.閉塞部の門脈は拡張していた.
【考察】
われわれは腫瘍近傍の門脈が閉塞していると,門脈に腫瘍が浸潤していると診断しがちである.今回われわれは,門脈に腫瘍が軽度浸潤している症例と,高度に浸潤している症例を経験した.軽度の浸潤症例では,門脈の閉塞部は先細り状の狭窄であった.閉塞部の門脈壁に不整を認めず,門脈内腔は無エコーであった.造影により門脈は均一に造影された.高度浸潤症例では,門脈は拡張していた.門脈壁は不整ないし不明瞭で,門脈内腔のエコーレベルが無エコーでなく,低エコーであった.さらにその低エコー域に不均一な造影効果を認めた.以上より,門脈腫瘍浸潤の軽度,高度を閉塞部の所見で鑑別可能と考えた.
【結語】
門脈閉塞を伴った肝腫瘍の2例を経験した.門脈閉塞部の所見から,門脈浸潤の程度を鑑別可能と考えた.今後症例を重ねて検討したい.