Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 消化器
胆道

(S660)

腎細胞癌胆嚢管転移の1例

A case of cystic duct metastasis from renal cell carcinoma

竹内 有加里, 松居 剛志, 野村 寛, 男澤 千啓, 古賀 英彬, 桜井 康雄, 高橋 邦幸, 真口 宏介

Yukari TAKEUCHI, Takeshi MASTUI, Hiroshi NOMURA, Chiharu OTOKOZAWA, Hideaki KOGA, Yasuo SAKURAI, Kuniyuki TAKAHASHI, Hiroyuki MAGUCHI

1手稲渓仁会病院臨床検査部, 2手稲渓仁会病院消化器病センター, 3手稲渓仁会病院放射線診断科

1Department of Medical Laboratory, Teine Keijinkai Hospital, 2Center for Gastroenterology, Teine Keijinkai Hospital, 3Department of Diagnostic and Interventional Radiology, Teine Keijinkai Hospital

キーワード :

【症例】
69歳 男性
【主訴】
特記事項なし
【生活歴】
喫煙:なし,飲酒:機会飲酒
【家族歴】
父:胃癌
【入院時現症】
身長173cm体重56kg体温36.4℃血圧131/80mmHg脈拍60回/分,整
腹部:平坦,軟 圧痛なし
【入院時検査所見】
RBC422万/μl.Ht40.1%.Plt11.4万/μl.TP5.8g/dl.A/G比2.22.ChE240U/l.UN25.3mg/dl.CREA1.18mg/dl.eGFR48ml/min/1.7.Cl109mEq/l
【経過】
2015年6月に右腎細胞癌に対して腹腔鏡下右腎摘出術を施行された.病理診断はClear cell carcinomaであった.以後,泌尿器科外来通院中であったが,2016年5月検診超音波検査で膵鉤部に30mmの嚢胞性病変を指摘され,当センター紹介受診.膵鉤部の嚢胞性病変はIPMNの診断であったが,MRCPで胆嚢管に欠損像を認め,CTで同部位に強い造影効果を認める結節を認め,精査加療目的に入院となった.
腹部超音波検査では胆嚢は短径46mmと腫大し,内部には結石を数個認めた.胆嚢頚部には嵌頓を疑う8mm大の結石を認めた.胆嚢管内には楕円形で境界明瞭,辺縁平滑,内部エコー均一で血流シグナル豊富な低エコー腫瘤を認めた.SMIでは胆嚢管壁から腫瘤内に血管像が豊富に描出された.造影超音波検査では,血管相で早期から全体が均一な強い染影を呈した.MFIでは微細な腫瘍血管が均一に描出された.造影SMIでもSMIと同様に豊富な血管像が明瞭に描出された.
造影CTでは同部は動脈相で強く濃染し,門脈相では染影の持続が見られ,平衡相では肝実質と同等~やや高吸収であった.MRIでT1強調像で低信号,T2強調像で低信号,DWIで拡散低下であった.EUSでは胆嚢管内にほぼ充満する境界明瞭平滑で内部エコー均一な低エコー腫瘤であり,胆嚢管内腫瘤を疑う所見であった.ERCでは胆嚢管内に類円形で平滑な透亮像を認め,上部胆管,右肝管は腫瘤で圧排されている所見を認めた.PET-CTでは有意な転移を疑うFDGの異常集積は認められなかった.
以上の所見から腎細胞癌の胆嚢管転移を疑い,開腹胆嚢摘出術を施行した.病理では腫大した類円形核と淡明あるいは好酸性の細胞質を有した異型細胞が充実性胞巣を形成し増殖しており,淡明細胞癌の像であった.免疫組織検査ではCKAE1/AE3(+),CD10(+),vimentin(+)であり,腎癌のclear cell carcinomaの転移を疑う所見であった.
【考察】
腎癌は,しばしば肺,骨,肝臓へ血行性転移をするが,胆嚢転移は少なく,さらに胆嚢管転移の報告は検索し得た限りでは認められていない.転移性胆嚢腫瘍の画像所見の特徴は輪郭整で亜有茎性の形態をとることが多いとされるが,広基性,びまん性に浸潤した例の報告もあり,形態のみで診断することは困難である.また,腫瘍表面の帯状高エコーも転移性胆嚢腫瘍の特徴とされている.ほかの特徴として腎癌の胆嚢転移では血流豊富な血行動態がある.Sonazoidを用いた造影USおよび造影EUSでは腎癌の胆嚢転移の場合,比較的均一に造影されることが知られている.
本例では胆嚢管内に充満する低エコー腫瘤を認め,広基性,輪郭整,内部エコー均一であり,腎癌の胆嚢転移に矛盾しない所見であったが,腫瘍表面の帯状高エコーは認められなかった.造影USでは早期から均一に造影され,CTでも早期から著明に濃染し,染影の持続がみられ,腎癌の転移を疑う所見であった.
【結語】
稀な腎細胞癌胆嚢管転移の1例を経験したので報告した.