Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 消化器
胆道

(S659)

診断が困難であった肉腫様の部位を伴う胆嚢癌の一例

A case of gallbladder carcinoma with a sarcoma-like site that was difficult to diagnose

森本 幸, 河関 恵理子, 上妻 玉恵, 福永 豊和, 栗田 亮, 山川 康平, 寺島 宏明, 堀口 雅史, 岡本 拓也

Sachi MORIMOTO, Eriko KOUZEKI, Tamae KODUMA, Toyokazu FUKUNAGA, Akira KURITA, Kouhei YAMAKAWA, Hiroaki TERAJIMA, Masashi HORIGUCHI, Takuya OKAMOTO

1公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院臨床検査部, 2公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院同消化器センター

1Clinical Laboratory Department, Tazuke Kofukai , Medical Research Institute, Kitano Hospital, 2Digestive Disease Center, Tazuke Kofukai, Medical Research Institute, Kitano Hospital

キーワード :

症例は60歳代女性.二ヶ月ほど続く心窩部痛,背部痛のため近医受診.その際施行した腹部超音波検査(US)にて胆嚢壁肥厚と胆石を指摘され精査目的に当院消化器センターを紹介受診.
血液所見は,γGTP 174U/L,ALP 174U/L,膵Amy 44U/Lと軽度高値を示し,腫瘍マーカーはCA19-9 86U/mL,CEA 2.0ng/mlであった.他項目は基準範囲内であった.
当院USでは,胆嚢体部から頸部に著明な壁肥厚を認めた.壁内は低エコー・やや不均質,内膜面は体部側でほぼ平滑,頸部側では一部不整,漿膜側は頸部の一部で肝臓との境界が不明瞭であった.CDIにて明らかな血流シグナルは認めず.底部にdebris,頸部にはASを伴い結石を疑う高エコー腫瘤を認めた.胆嚢管の明らかな壁肥厚は認めず.膵胆管合流異常は指摘し得なかった.
ソナゾイド造影では,早期血管相にて胆嚢体部~頚部で壁の均一な濃染を認めたが内腔面は一部不整であった.底部のdebrisを疑う部位と頸部の結石を疑う腫瘤には造影効果を認めず,それぞれdebris,結石と考えた.超音波検査では胆嚢癌を疑い鑑別診断として黄色性肉芽腫性胆嚢炎(XGC)を考えた.
造影CTでは,胆嚢頚部に早期相にて軽度の造影効果を伴う対称性の壁肥厚を認め,後期相では造影効果が遷延する部位や低下する部位など様々であった.胆嚢床の早期濃染も認めたため腫瘍性病変も否定しきれないがXGCなど炎症性病変が疑われた.
MRI(Gd-EOB-DTPA造影)では,胆嚢体部から頚部に早期濃染を伴う内腔面へと隆起する壁肥厚を認め,拡散強調像にて高信号を呈した.またPET-CTでは,胆嚢頚部にFDGの高度集積を認め,胆嚢癌が疑われた
超音波内視鏡(EUS)では胆嚢頚部に低エコー領域あり,これより尾側にややエコー輝度の高い,比較的層構造の保たれた全周性の分節性壁肥厚を認めた.胆嚢管に明らかな壁肥厚や結石は認めず.また膵胆管合流異常を認めた.
内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)施行時に採取した胆汁細胞診はclassⅢ,胆管肝門分岐部の生検ではp53やki-67で一部陽性の腺上皮をわずかに認め,悪性疾患を否定しきれず,胆嚢床切除術・胆管切除胆道再建術・肝門部リンパ節廓清術を施行.
病理組織所見では,一部高-中分化のtubular adenocarcinomaを伴う低分化のadenocarcinomaであった.加えて一部にAE1/AE3陽性,Vimentin陽性の異型紡錘形細胞を認めたが,D2-40やS-100蛋白,myogenin,α-SMAは陰性のため肉腫様の部分を含む胆嚢癌(so-called carcinosarcoma)と診断した.
USでは鑑別困難であった肉腫様成分を含むまれな胆嚢癌の症例を経験したので文献的考察も交えて報告する.