Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 消化器
消化管

(S656)

超音波診断しえたClosed loop型腸閉塞の一例

A case of closed loop bowel obstruction diagnosed by ultrasonography

上田 遼太, 湯浅 典博, 毛利 康一, 深田 浩二, 小島 祐毅, 有吉 彩, 前岡 悦子

Ryota UEDA, Norihiro YUASA, Koichi MORI, Koji FUKATA, Yuki KOJIMA, Aya ARIYOSHI, Etsuko MAEOKA

1名古屋第一赤十字病院一般消化器外科, 2名古屋第一赤十字病院検査部

1General and Gastrointestinal Surgery, Japanese Red Cross Nagoya Daiichi Hospital, 2Laboratory Department, Japanese Red Cross Nagoya Daiichi Hospital

キーワード :

Closed loop型腸閉塞とは拡張腸管から狭窄腸管への移行部が2個存在し,かつそれが近傍にある場合,しばしば用いられる(Balthazar EJ. Am J Radiology, 1994;162:255-61).固定された1点で腸が捻転したり,内ヘルニアや癒着によって形成された異常な間隙に小腸が入り込むことによっても形成される.Closed loop型腸閉塞はしばしば血流障害を伴い,外科的処置を要することが多い.これまでこの病態はCTで多く報告されてきたが,超音波診断された報告は少ない.
症例は61歳男性で,2016年9月に左上腹部痛,嘔吐を主訴に当院を受診した.既往に胃癌のため胃切除術(Billroth I法再建),腸閉塞がある.来院時腹部所見は膨満・軟で,左上腹部に圧痛を認めた.血液検査ではCRP 0.15 mg/dL,WBC 13300 /μL,Lactate 0.6 mmol/Lと軽度の炎症反応上昇を認めた.腹部造影CTでは左上腹部に上部小腸の狭窄とその口側小腸の拡張,腸間膜周囲の脂肪織濃度の軽度上昇・少量の腹水を認めた.Closed loop型腸閉塞の所見は指摘できなかった.癒着性イレウスと診断し,胃管を挿入して保存的治療を開始した.入院3日目,胃管抜去後にイレウス症状が再燃したため,入院4日目にイレウス管を挿入した.同日の腹部超音波検査で,上腹部正中切開創瘢痕の近傍で拡張小腸が非拡張小腸に移行する部分を2カ所に認めた.Closed loop型腸閉塞が疑われたため,入院5日目に再度,腹部造影CTを施行したところ,左上腹部に小腸の狭窄を2カ所認め,この両者は近接していたので,CTでもClosed loop型腸閉塞と診断した.入院6日目に開腹術を施行した.開腹すると,上部小腸と小腸間膜が癒着して索状物を形成し,そこに間隙を生じて小腸がはまり込んでいた.索状物を切除すると小腸の2箇所の狭窄は解除された.開腹時,拡張した小腸の色調は不良だったが,索状物の切離後は良好となったため,小腸切除は行わなかった.術後経過は良好で術後16日目に退院した.