Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 消化器
消化管

(S655)

サルコイドーシス経過観察中に発症したGastrointestinal stromal tumor(GIST)

A case of Gastrointestinal stromal tumor(GIST) with sarcoidosis

植林 久美子, 川井 夫規子, 木全 大, 尾原 健太郎

Kumiko UEBAYASHI, Fukiko KAWAI, Masaru KIMATA, Kentaro OBARA

1済生会宇都宮病院超音波診断科, 2済生会宇都宮病院外科, 3済生会宇都宮病院病理診断科

1Department of Ultrasound Medicine, Saiseikai Utsunomiya Hospital, 2Department of Surgery, Saiseikai Utsunomiya Hospital, 3Department of Pathology, Saiseikai Utsunomiya Hospital

キーワード :

【症例】
78歳男性で,2012年に肺門部リンパ節腫大を精査しサルコイドーシスと診断され,他院で経過観察をしていた患者である.2016年7月に体重減少の精査のため超音波診断科に紹介となり来院した.腹部超音波検査で,胃体上部後壁の漿膜側に突出するように,境界明瞭,内部は不均一で石灰化や嚢胞変性を伴う70×65 mmの低輝度腫瘤を認めた.小弯リンパ節は24 mmと腫大していた.腫瘤は胃壁の第4層(固有筋層)と連続して見え,Gastrointestinal stromal tumor(GIST)を疑った.上部消化管内視鏡検査では噴門部から穹窿部にかけて隆起性病変を認め,頂部の粘膜が決壊し腫瘍が露出しており,粘膜下腫瘍様形態の進行胃癌も否定できない所見であった.生検ではGISTの所見であり,肝転移や多臓器浸潤,腹膜播種はなく噴門部側胃切除術を施行した.術中に小弯側の腫大リンパ節をサンプリングした.胃の病変は潰瘍形成を伴う粘膜下腫瘍であり,組織学的には紡錘形細胞が密に増殖し,核分裂像が多数認められた.免疫染色でc-kitとCD34は陽性,S100蛋白とデスミン,平滑筋アクチンは陰性でありGISTの診断となった.リンパ節に悪性の所見はなく,壊死を伴わない類上皮細胞性肉芽腫が多発しており,サルコイドーシスが示唆された.腫瘍径,核分裂像数から高リスクに分類され,術後補助化学療法としてイマチニブを投与し経過観察中である.
【考察】
サルコイドーシスは眼,肺,皮膚,心臓,肝臓など全身の臓器に非乾酪性肉芽腫を生じる原因不明の疾患である.サルコドーシス患者は悪性腫瘍の併発頻度が高いとの報告が多いが,否定的な意見もあり未だ結論は出ていない.2015年に発表されたメタアナリシスでは,サルコイドーシスと上部消化管悪性腫瘍には中等度の関連があると報告されているが,GISTとの併発は稀である.GISTは消化管に発生する間葉系腫瘍の中で最も頻度が高く全消化管に発生する.好発は胃が最も多く60%を占めると言われている.潜在的に悪性の可能性があり切除可能ならば切除し,リスク評価をして経過観察が行われる.転移は肝臓や腹膜播種が多く,リンパ節転移は稀である.健診などの消化管造影検査や内視鏡検査で発見されることが多いが,本症例では経腹超音波検査(AUS)で4層由来のGISTと判断できた.胃の4層由来の腫瘍において①3cm以上②結節分葉状③内部エコー不均一④無エコー域⑤潰瘍形成が悪性所見であるとの報告があり,今回AUSにおいて①③④の項目,内視鏡検査において⑤の項目に合致する所見を得た.AUSでもGISTを評価可能と考えるが,リンパ節腫大があったため画像検査でGISTとの診断に至るのに難渋した.所属リンパ節腫大を認めても,GISTのリンパ節転移は稀であるため,サルコイドーシスや悪性リンパ腫,自己免疫疾患なども念頭におく必要があると考える.
【結語】
サルコイドーシス患者に発症したGISTという稀な症例を経験した.