Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.677(2017年)→0.966(2018年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 消化器
消化管

(S655)

超音波とCTで乖離がみられたSMA症候群に伴う門脈ガス血症の一症例

A case of portal venous gas in SMA syndrome with different findings between ultrasonography and abdominal CT scan

大塚 香織, 増田 章子, 齋藤 綾, 小島 徳子, 鳥谷部 武志

Kaori OTSUKA, Akiko MASUDA, Aya SAITO, Noriko KOJIMA, Takeshi TORIYABE

1上尾中央医科グループ白岡中央総合病院検査技術科, 2上尾中央医科グループ白岡中央総合病院消化器内科

1Department of Examination, Shiraoka Central General Hospital, 2Department of Gastroenterology, Shiraoka Central General Hospital

キーワード :

【目的】
上腸間膜動脈症候群(以下SMA症候群)とは,十二指腸水平脚が大動脈と上腸間膜動脈(SMA)により圧迫され,狭窄・閉塞をきたす疾患である.腹部CT検査(以下CT)にてSMA症候群を疑い精査の為に腹部超音波検査(以下超音波)を施行した際,CTでは認められなかった門脈ガス血症が超音波で明瞭に認められた症例を経験したので報告する.
【症例】
18歳,女性.摂食障害がみられ,身長158cm体重34kg(BMI:13.5)と極度の痩せ型.食べ放題での過食の後,腹痛・嘔吐が持続し近医受診.腹部レントゲンにて著明な胃拡張を指摘され,当院消化器内科を紹介受診した.腹部診察所見は圧痛があるものの反跳痛や筋性防御等は認めなかった.CTを施行したところ食物残渣による胃十二指腸の著明な拡張を認めた.また大動脈とSMAに挟まれた十二指腸水平脚は,急激にかつ非常に狭まっていることが見てとれた.これらのことからSMA症候群を疑い,同日入院し,翌日に超音波を施行した.
【腹部超音波検査所見】
仰臥位では著しい嘔気症状が出現するため,左側臥位にて記録を行った.著明な胃拡張に加え,胃内容物の食道逆流も認められた.大動脈とSMAの分岐角は約16°と著明な鋭角を呈していた.加えて門脈右枝に肝末梢へと流入する点状高エコーの散在を認め,門脈ガス血症の合併と判断された.また多量の点状高エコーが流入した肝右葉は実質の粗雑化とエコー輝度の上昇がみられた.しかし腹部造影CT検査では門脈や肝実質に明らかな異常所見は認められなかった.
【経過】
その後,胃内容物の吸引が行われた.二日後に再度超音波を施行.門脈ガスは完全に消失していた.
【考察】
本症例はSMA症候群に合併した著明な胃拡張が胃壁の透過性亢進をもたらし,胃内部のガスが門脈に移行して門脈ガス血症を起こしたものと考えられる.CTでは門脈ガスを認めなかったことから,門脈ガス自体は発症早期のもの,あるいは門脈内のガスが水に可溶性のある二酸化炭素由来のものと推察された.また腹部診察所見にて重症所見が乏しかったことも,超音波とCTでの門脈ガス所見の乖離に関係しているものと推定された.加えて胃内容物の吸引により門脈ガスの速やかな消失を認めたことから,門脈ガスの消失の有無が病状の改善と強く関係していることが示唆された.
【結語】
今回超音波とCTで乖離がみられたSMA症候群に伴う門脈ガス血症に遭遇した.従来門脈ガスを認めた場合,腸管穿孔や腸管壊死等の緊急手術を要する状況と判断されることがあった.しかし今回のようにCTで認めず超音波のみで認めた門脈ガスの場合,発症早期もしくは重篤な腸管疾患の可能性は低いことが示唆され,保存的治療による改善が期待できることがあると考える.ただし,門脈ガスを認めることが緊急を要する状態であることには違いなく,慎重な対応と経過観察が求められると考える.