Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 消化器
肝臓1

(S654)

高アンモニア血症を伴った先天的門脈-静脈(PV)短絡の2例

Congenital porto-systemic shunt: report of two cases

石田 秀明, 渡部 多佳子, 山中 有美子, 小松田 智也, 宮内 孝治, 大山 葉子, 長沼 裕子, 千葉 崇宏, 武田 美貴

Hideaki ISHIDA, Takako WATANABE, Yumiko YAMANAKA, Tomoya KOMATSUDA, Takaharu MIYAUCHI, Yoko OHYAMA, Hiroko NAGANUMA, Takahiro CHIBA, Miki TAKEDA

1秋田赤十字病院超音波センター, 2秋田赤十字病院放射線科, 3秋田厚生医療センター臨床検査科, 4市立横手病院消化器科, 5栗原中央病院放射線科, 6栗原中央病院消化器科

1Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Radiology, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Medical Laboratory, Akita Kousei Medical Center, 4Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 5Department of Radiology, Kurihara Centeral Hospital, 6Department of Gastroenterology, Kurihara Centeral Hospital

キーワード :

【はじめに】
高アンモニア血症例に関し肝内外の門脈-静脈短絡(Portal-systemic shunt:PSS)の有無とその羅患部位同定は超音波検査上重要な意味を有する.特に,それが治療の対象となる先天的(と思われる)PSSの場合はさらに重要度が増す.今回,我々は,現在の超音波診断の精度を考える上で示唆を与える2例を経験したので報告する.診断装置:症例:東芝社:AplioXG, Aplio500(症例1),日立社:Ascendus(症例2),で,超音波造影剤はソナゾイド(第一三共社)を用い,通常の肝腫瘍の造影方法に準じた.
【症例1】
60歳代男性.胃癌切除目的に入院.術前は特記すべき臨床症状無し.肝機能も含めた生化学データ正常.他院で施行した超音波(学会専門医施行)やCT上も問題なし.胃癌術後時折意識レベル低下.血中アンモニア値が385μg/dlと著明上昇(正常値:20-87).なお,術中の観察では肝は正常であった.精査目的の超音波検査でS6,S7中心に多数のPVSを認めた.ラクツロース,リーバクト,などの内服で血中アンモニア値は正常化.現在外来通院中.
【症例2】
70歳代女性.最近時折意識消失有り,精査加療目的に受診.肝機能もデータ正常,しかし,血中アンモニア値が228μg/dlと著明上昇(正常値:80以下).超音波検査(学会認定検査士施行)では肝も含め腹部に異常所見指摘できず.CTでは下腸間膜静脈-下大静脈間に大きなPSSあり.CT上肝は正常で他の異常脈菅もなかったが上行結腸壁に肥厚有り.CFで同部に進行大腸癌を確認,治療手順として,PSSに対する経静脈的塞栓術を,次いで開腹下に上行結腸癌切除を施行.術後経過順調で現在外来通院中.なお,術中の観察では肝は正常であった.
【考察とまとめ】
我々は,過去の本学会で,約70例の肝内PSSを対象に検討し,ほとんどの例では,a)背景肝は正常で,b)原因不明で,c)高アンモニア血症を伴わないこと,d)短絡部は一箇所であること,e)臨床症状を呈する例のほとんどが,HHT(Osler病)であること,を報告してきた.しかし,今回の症例1はこのc)d)e)から離れたもので比較的まれと思われる.文献的には,肝に慢性変化を伴わず短絡が一箇所である場合は先天的要因によるPSSと考えられている.本例もそのような例と思われる.なお,先天的肝内PSSは左葉に巨大な孤立性短絡路が形成される場合,と,右葉に多数の短絡路が形成される場合があり,症例1は後者の型を呈していた.肝外PSSに関してもほぼ同様の考えから症例2は先天的と思われる.先天的肝外PSSは脾周囲に脾腎や胃腎短絡がみられる場合,と上,下腸間膜静脈と周囲静脈間に孤立性短絡路が形成される場合がほとんどで,症例2は後者に属すると考えられる.臨床上特筆すべきは,過去の先天的PSS成人例の多くはかなり高齢になって初回発症がみられることであり,約半数が誤った診断で長期間放置されていた例も少なくない.その意味で,有意識障害例に関しては必ず画像で腹部をチェックする必要があり,超音波検査施行者も肝内外PSSの拾い上げ能は十分である必要があるが,そう行かないのは,現在の学会の超音波教育が不十分であることを,この2例は端的に物語っている.