Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 消化器
肝臓1

(S652)

門脈の血行動態と肝機能障害の推移に興味深い相関を認めたアルコール性肝硬変の一症例

A case of alcholic liver cirrhosis with strong and interesting correlation between the portal blood flow and the progress of liver function disorder

増田 章子, 大塚 香織, 齋藤 綾, 小島 徳子, 鳥谷部 武志

Akiko MASUDA, Kaori OTSUKA, Aya SAITO, Noriko KOJIMA, Takeshi TORIYABE

1上尾中央医科グループ白岡中央総合病院検査技術科, 2上尾中央医科グループ白岡中央総合病院消化器内科

1Department of Examination, Shiraoka Central General Hospital, 2Department of Gastroenterology, Shiraoka Central General Hospital

キーワード :

【目的】
当院では肝疾患の超音波検査の際,可能な限り肝内血流の評価も行うよう努めている.
今回,アルコール性肝硬変の経過観察において門脈逆流を認め,肝障害の改善と共に門脈逆流も改善し順行性に至った症例を経験したので報告する.
【症例】
2013年8月にアルコール性肝硬変と診断され,経過観察のため定期的に当院消化器内科外来の受診をされていた.飲酒はやめられず採血検査結果をはじめ著明な改善は認められなかった.2016年4月急激な多量飲酒にて全身状態の急激な悪化を来たし,救急搬送され即日入院加療となった.退院後,患者も禁酒に積極的になり採血検査結果も改善してきている.
【方法】
肝臓内流入血管の肝動脈と門脈の血流状態を評価するため,カラードプラ法を施行.肝動脈血流の亢進を示唆するモザイク血流の有無や門脈血流減弱の有無及び血流方向をおおまかに評価し,かつ門脈血流の流速を測定した.
【結果】
2015年9月の定期検査では左右門脈ともに流速は遅いものの順行性を呈し,肝動脈血流は亢進していた.2016年4月の救急搬送時では左右門脈ともに逆行性を示しており,肝動脈血流は前回と著変なく亢進したままであった.禁酒をするようになった同年6月,血液検査結果は改善したものの,門脈血流は逆行性を示したままであった.同年9月,飲酒量は少し増えてはいたが血液検査結果は明らかな変化はなし.超音波検査を施行すると左右門脈とも血流方向は順行性に改善していた.しかしながら11月,右門脈は順行性のままであったが,左門脈のみ再び逆行性を示した.いずれの時期も肝動脈血流は亢進を示したままであった.以降,経過観察中である.
【結論】
アルコール性肝硬変において肝機能の悪化に伴い門脈血流が減弱し,ひいては逆流まで陥ったが肝機能障害の改善に伴い門脈血流も改善し順行性にもどった症例を経験した.このことから肝障害の程度と門脈血流の状態が強く相関することが明瞭にみてとれた.門脈逆流は肝硬変における予後不良の一つの所見ではあるものの,その改善の程度は予後を予測する一つの因子になるものと示唆された.今後,同じような症例の患者を超音波検査するときは,門脈血流の評価は欠かせないものと考える.また,今回の症例の門脈血流の状態が今後どのように変化してくるか大変興味深く,主治医と協力して今後も経過を追っていく予定である.