村田 園江, 太田 剛弘, 八木 秀也, 北川 尋基, 山口 良子, 西山 裕善, 水野 博之, 河野 仁美, 村岡 英幸, 長江 啓二

Sonoe MURATA, Takahiro OTA, Hideya YAGI, Hiroki KITAGAWA, Ryoko YAMAGUCHI, Hiroyoshi NISHIYAMA, Hiroyuki MIZUNO, Hitomi KAWANO, Hideyuki MURAOKA, Keiji NAGAE

¹高の原中央病院生理機能検査室, ²高の原中央病院循環器科

¹Physiolodical laboratory, Takanohara Central Hospital, ²Division of Cardiology, Takanohara Central Hospital

キーワード :

【症例】
64歳男性
【主訴】
呼吸困難
【病歴】
咳喇にて近医投薬治療中だったが，夜間に呼吸困難を訴え，当院救急搬送された．胸部Ｘ線で心拡大，肺うっ血，肺野浸潤影を認め，急性肺炎と心不全を疑われ入院となった．既往歴は糖尿病．喫煙歴あり．
【身体所見】
身長:171cm，体重:62kg，血圧:139/87mmHg，体温:36.6°，SPO2 :89％（酸素4Lマスク），肺野:右肺野広範にラ音（＋），左肺野もラ音（±）．心音：1音→　2音→　3,4音（－），心雑音：聴取せず，腹部：腹部膨満なし，下肢動脈触知：右足背動脈触知不良，左足背動脈・両後脛骨動脈触知可，下肢浮腫:なし．
【入院時検査】
胸部Ｘ線：CTR64％，肺うっ血，右肺浸潤影．
【心電図】
LVH．胸部CTで右上葉に浸潤影・両側胸水を認めた．
【入院後検査】
心エコー図検査にて，LVはdiffuse severe hypokinesisで，前壁中隔から前壁にかけthinningを伴う壁運動異常を認めた．LVEF15％と低く，高度僧帽弁逆流（MR），左室拡大認めた．
第10病日に虚血性壁運動異常を考慮し，心臓カテーテル検査施行．冠動脈3枝病変（TVD）（RCA:#1 100％，LAD:#6 75％，#7 90％，LCX:#13 90％）を認めた．閉塞性動脈硬化症疑いに対して，下肢動脈カテーテル検査施行．両側下肢動脈に有意狭窄を認めた．下肢動脈エコー検査は左浅大腿動脈に閉塞を認め，膝窩静脈末梢側から側副血行により血流を認めた．足趾に発赤を認めた．
【入院後経過】
肺炎に対し抗生剤，心不全に対し利尿剤など投与し，症状改善傾向で退院とした．
経皮的冠動脈形成術（PCI）目的に再入院．再入院時検査で，Hb5.3と貧血を認め，PCIは中止とした．消化管内視鏡検査で明らかな出血源は特定できなかった．腹部造影CTで腹部大動脈にshaggy aorta様所見があり，経食道心エコー図検査で下行大動脈に潰瘍型プラークの多発を認めた．腹部エコー検査で腹部大動脈に多数の潰瘍型可動性プラークを認め，Shaggy Aorta Syndromeと考えた．また足趾全体に網状紫斑，右母趾などに疼痛，暗紫色の潰瘍が出現．病理検査で皮下組織の動脈内にコレステリン結晶からなる塞栓物を認め，Blue Toe Syndromeと考えられた．TVDに伴う心不全とShaggy Aortaに伴うBlue Toe合併症例を経験したので報告する．