Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 循環器
症例2

(S647)

検査室で発見された大動脈解離の2症例

Two cases of aortic dissection discovered in the laboratory

福嶋 友孝, 岡田 昌子, 古賀 恵美子, 長濱 大介, 植島 里佳, 北田 弘美, 小川 恭子, 寺本 美穂, 中川 雅美

Tomotaka FUKUSHIMA, Masako OKADA, Emiko KOGA, Daisuke NAGAHAMA, Rika UEJIMA, Hiromi KITADA, Kyoko OGAWA, Miho TERAMOTO, Masami NAKAGAWA

1JCHO大阪病院中央検査室, 2JCHO大阪病院臨床検査科, 3JCHO大阪病院循環器科

1Central Laboratory, JCHO Osaka Hospital, 2Laboratory Department, JCHO Osaka Hospital, 3Cardiovascular Department, JCHO Osaka Hospital

キーワード :

一般に経胸壁心エコー図(TTE)による上行大動脈の評価は経食道心エコー図やCTに比較しての診断精度が劣り,検査室で行われる検査において大動脈解離について注意が払われることはまれである.しかし我々は偶然検査室の予約検査で上行大動脈解離を疑う所見を得て,造影CTによって確定診断に至った2症例ついて報告する.
【症例1】
40代男性,心房細動の既往があり2010年3月急性心筋梗塞にて#6にステントを挿入した.2012年12月上旬突然の背部痛と39度の発熱があった.同日に抜歯しており内服処方されたが改善しなかった.当院循環器内科に紹介され同日TTEを施行したが心嚢液貯留のみだった.12月中旬に吐気,ふらつきがあり救急搬送された.陳旧性心筋梗塞の経過観察目的で入院後のTTEにて上行大動脈にflap伴う解離を認めた.CTにて弓部にentry,逆行性に上行大動脈にいたる急性大動脈解離を認め,基部の偽腔は一部血栓化していた.同日緊急で上行弓部置換術ならびにelephant trunk術を施行された.
【症例2】
70代女性,2016年3月心雑音と高血圧精査のため紹介受診された.心悸亢進と胸痛を時々感じていた.心電図で特記事項はなく,胸部X線でCTR59%,大動脈の蛇行が疑われた.TTEで上行大動脈が拡大し,内腔にflapを伴う解離と中等度大動脈弁狭窄兼閉鎖不全(ASR)を認めた.CTにて上行大動脈が拡大し腔内に線状の陰影を認めるも偽腔と真腔の濃度差は認めず,急性解離を疑う高吸収成分は指摘出来なかった.慢性A型解離とASRの診断で上行大動脈置換術と大動脈弁置換術のため他院紹介,緊急手術となった.
【まとめ】
2008年から2015年の間で検査室にてTTE施行し急性大動脈解離と診断された症例は26202例中2例(0.07%)と決して多くはなかった.今回経験した2症例とも予約検査の際に通常の傍胸骨長軸断面よりも1肋間上部から上行大動脈を評価したことが解離の発見につながった.診断の遅延が致命的な大動脈解離について,明確な胸痛がない場合でも通常よりも上部肋間を観察することで上行大動脈の拡大やintimal flapなどの所見についても診断することが可能であった.2症例とも検査室から同日緊急手術となった.