Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 循環器
症例2

(S646)

心不全症状を呈し病理検査にて心膜悪性中皮腫の診断に至った1例

A case of cardiac insufficiency and diagnosis of pericardial malignant mesothelioma by pathological examination

綿引 愛美

Manami WATAHIKI

獨協医科大学病院循環器・腎臓内科

Department of Cardiology and Kidney, Dokkyo Medical University Hospital

キーワード :

拡張障害による心不全症状を呈し,心エコー検査にて心嚢内に充実性の構造物を認めた.
拡張障害の進行による循環不全が進行し,血圧低下を認め,緊急での心膜開窓術を施行し,心膜悪性中皮腫の診断に至った症例を経験した.症例は71歳 女性.下腿浮腫を主訴に近医を受診,胸部CT検査や心エコー検査にて心嚢液貯留を認め,精査加療目的に入院.
両側胸水貯留を認め,胸水穿刺の結果は漏出性胸水であった.胸水の腫瘍マーカーや膠原病抗体,ウィルス抗体を提出するも明らかな異常は認めなかった.心嚢液貯留は全周性に10mm程度であり,心タンポナーデの所見もなく心嚢穿刺は施行せず,利尿剤加療にて心不全は軽快し退院となった.しかし約1か月の経過で下腿浮腫の増悪に加え全身倦怠感・呼吸苦症状も出現し再入院となった.その際の心エコー検査にて心嚢内に充実性の構造物を認め,心外膜と心筋が癒着し,心外膜の可動性が低下している所見を認めE/A:2.4と拘束型パターンを示し著明な拡張障害を示した.心不全加療後も症状が増悪し,外科手術を考慮し待機中に血液検査所見からも循環不全の進行や血圧低下と全身状態が悪化し,緊急での心膜開窓術を施行.術中所見は心外膜表面に黄白色の充実性成分を認め,心膜と強固に癒着.心膜・心外膜の癒着を剥離すると,右室流出路・大動脈基部・左心耳周囲は固い充実性腫瘤で埋め尽くされ,迅速病理診断の結果,classⅤであった.腫瘍からの出血もみられ,腫瘍摘出は困難と判断し,閉創.術中より高容量のカテコラミン製剤を投与するも循環動態の改善は得られず,術翌日永眠された.家族の同意のもと,病理解剖を施行.組織学的にクロマチン濃性の異型核と粘液性の細胞質を有する紡錘形細胞が胞巣を形成.免疫染色にてクロマチン陽性,D2-40陽性,CEA陰性,TTF-1陽性,p63陰性であり心原発性悪性中皮腫に矛盾しない結果であった.心膜悪性中皮腫は極めて稀な疾患であり,固有の症状も乏しく診断に難渋した.内科的加療に反応しにくい慢性心不全症状を呈し,術後の病理検査にて診断に至った一例を経験したため報告する.