Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 循環器
症例2

(S645)

IgG4関連心膜炎に対して心膜切除術を施行し,心エコーにて治療経過を観察した1例

A Case of IgG4-related Disease with Pericarditis

角田 智枝, 國近 英樹, 小野 史朗, 赤川 英三, 田中 純子, 栢田 優子, 松本 勝彦, 縄田 純子, 村田 幸栄

Tomoe KADOTA, Hideki KUNICHIKA, Shiro ONO, Eizo AKAGAWA, Jyunko TANAKA, Yuko KAYATA, Katsuhiko MATSUMOTO, Jyunko NAWATA, Sachie MURATA

1済生会山口総合病院生理検査室, 2済生会山口総合病院循環器内科

1Physiology laboratory, Saiseikai Yamaguchi General Hospital, 2Department of Cardiovascular Medicine, Saiseikai Yamaguchi General Hospital

キーワード :

【はじめに】
近年血清IgG4高値と標的臓器における多数のIgG4陽性形質細胞浸潤を特徴とするIgG4関連疾患が注目されている.標的臓器として膵臓,胆管,唾液腺,後腹膜腔の病変が知られているが,心膜炎症例の報告は少なく,治療経過も不詳である.
【症例報告,60歳代後半・男性】
201X年4月,労作時呼吸困難を自覚する.同年6月当院を受診する.心電図は低電位であり,CRP2.45と軽度の血液炎症所見の上昇を認めた.心エコーでは壁運動異常所見はなく,LVEF67%と心機能に問題を認めなかったが,全周性に心嚢液を認め心膜炎が疑われた.CTでは,心膜にびまん性肥厚を認めたが,一部結節状であることより,心膜炎以外に心膜転移や中皮腫などが鑑別に挙げられた.胸水穿刺液からは,悪性所見は認められなかった.心膜生検目的にて外科紹介となったが,胸腔鏡下心膜生検を希望されず,内服による右心不全治療の方針となった.しかし,同年9月には下腿浮腫や胸水貯留など右心不全の増悪を認めた.心エコーによる再検査では,心嚢液は減少していたが,右心系及び下大静脈の拡大を認めた.10月に心カテを施行;PCWP(26),PA 43/29(34),RV 45/24,RA(27),LV 160/31,CAG: intact coronaryの状態であった.また血液検査にて血清IgG4 174と上昇を認めたが,冠動脈CTでは冠動脈周囲炎や冠動脈瘤を示唆する所見は認めなかった.心膜肥厚の明らかな原因は不明であったが,収縮性心膜炎の病態に対して心膜切除術の適応と考え,同手術を実施した.切除した心膜は線維化を伴う肥厚が顕著であり,病理組織では炎症細胞浸潤,異型巨細胞の出現を認めた.肥厚した心膜と脂肪織内リンパ節においてIgG4陽性形質細胞を多数認め,IgG4関連疾患による心膜炎と診断した.術後よりステロイド治療を開始し,全身状態は著明に改善した.手術後1ヶ月の血行動態は,PCWP(6),PA 28/11(19),RV 32/4,RA(3)と改善を認めた.診断・治療の経過を心エコーにより継続して観察した.
【考察】
IgG4関連心膜炎の症例報告は少なく,また多くは診断に至っていないのが現状である.今回の症例の如く,心エコー所見にて滲出性心収縮性心膜炎の病態をとる心膜炎の鑑別疾患の中にはIgG4関連疾患を加える必要があると考えられる.さらにIgG4関連疾患の診断には,ステロイドによる治療効果を診断項目に含むことができるため,内科的治療を選択する上では心エコーによるステロイドの反応性の定量評価が重要となる.今回我々は,IgG4関連疾患による心膜炎に対する外科的心膜切除術及びステロイド治療を実施し,治療経過を心エコーにより観察し得た1例を報告する.