Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 工学基礎
弾性・変位計測,バブル,プローブ

(S637)

超音波断層像の画質向上のための音速の二次元分布推定

Estimation of 2D distribution of sound velocity for improvement of ultrasonic image quality

小野寺 絃, 阿部 啓一郎, 瀧 宏文, 金井 浩

Gen ONODERA, Keiichiro ABE, Hirofumi TAKI, Hiroshi KANAI

1東北大学大学院工学研究科, 2東北大学大学院医工学研究科

1Graduate School of Engineering, Tohoku University, 2Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University

キーワード :

【目的】
超音波診断においてはリニアプローブやセクタプローブなどのアレイプローブが広く用いられる.アレイプローブを用いた超音波診断では,生体内の組織の音速が一定である(多くの場合1540 m/sである)という仮定でビームフォーミング,イメージングを行っているため,生体内音速の不均一性により空間分解能や断層像のコントラストが低下する.本報告では,超音波断層像の画質向上を目指し,超音波プローブの各素子で受信された時間遅延を用いて関心領域内の音速分布を推定する手法を提案する.
【原理】
本手法では,関心領域内の目標からの反射波を各素子で受信する時刻の差を用いて音速を推定する.初めに,各素子で受信されたRF信号間の相互相関を計算し,特定の目標からの信号の受信時間差を算出する.次に,求めた時間に目標までの平均音速・深さをパラメータに持つ伝搬時間の理論式を整合させ,平均音速・深さを推定する.この操作を関心領域内の複数目標で行い,得られた結果から各ターゲット周辺の局所音速を解とする連立方程式を立てる.それらを解くことで音速分布を推定する.
【結果】
音速1496 m/sの水中に音速1540 m/sのシリコーンファントムを配置した実験系を作製し計測を行った.ターゲットとして,水中には直径50μmのモリブデンワイヤ,シリコーン内には直径100μmのナイロンワイヤを配置した.モリブデンワイヤを配置した水中領域において,局所音速の最大推定誤差を0.3%に抑えることができた.図1は得られた音速を用いて水中領域のモリブデンワイヤに対してイメージングを行った結果である.推定音速1495 m/sでイメージングを行った場合,超音波診断において広く用いられる音速1540 m/sでイメージングを行った場合に比べ,ラテラル方向包絡線の振幅半値幅がおよそ2/3に減少し,ラテラル方向空間分解能の向上を確認できた.視覚的にも,像の輝度が先鋭化し,ぼけが小さくなったことが確認できた.
【結論】
本報告では,超音波プローブの素子受信時刻差を用いて関心領域内の音速分布を推定する手法を提案した.本手法によって推定された音速を用いることで,超音波断層像の画質向上が実現可能であることが示唆された.