Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 工学基礎
弾性・変位計測,バブル,プローブ

(S636)

左室固有振動数を用いた心筋弾性率推定手法の境界拘束条件依存性

Boundary Condition Dependency on Left Ventricular Eigen Vibration for Cardiac Elasticity

田中 智彦, 丸岡 貴司

Tomohiko TANAKA, Takashi MARUOKA

株式会社日立製作所研究開発グループ

Research and Development Group, Hitachi, Ltd.

キーワード :

【背景】
心臓のポンプ機能は心筋の弾性率と密接に関わっており,診断が困難な拡張機能診断を目的とした非侵襲的な弾性計測手法の確立が求められている.その候補となる手法の一つに,心臓の固有振動数を介して弾性率を推定する振動弾性計測法がある.本手法は左室が弛緩している拡張末期の左室固有振動を超音波で計測し,適切な心臓振動モデルを仮定することで左室弾性を推定する手法である.心臓の振動モデルとしては,左室を一様な球殻として近似し,球殻の運動方程式に帰着させる方式が知られている.しかし,心臓モデルにおいては複数の近似(球殻近似,非粘性近似,一様心筋近似,境界拘束なし(自由振動)近似)がなされており,振動弾性計測法の実用化へは,これらの近似が実際の左室固有振動モデルとして妥当であるかの検証が課題となっている.そこで,本研究では境界拘束なし近似に着目する.実際の心臓は大動脈付近で拘束され,さらに心タンポナーデなどの疾患では側壁癒着により拘束されることから,拘束条件が固有振動に影響を与える可能性が高い.しかし,この境界拘束なし近似は未だ検証には至っていない.
【目的】
振動弾性計測法における課題の一つである,心臓モデルの境界拘束なし近似を検証する.
【方法】
ヒト心臓を対象とし,有限要素法による固有振動解析を行った.比較対象として,自由振動(FV),実際の心臓を想定した大動脈部の拘束モデル(正常心臓モデル:NH),さらに心タンポナーデを模擬した左室側壁部一点拘束モデル(心タンポナーデモデル:CT),左室側壁部面積を拡大した進行した心タンポナーデモデル(SCT)の4種類の解析を実施した.代表的な振動モードを抽出し,振動数の変化を調べた.なお,心筋の硬さは30 kPa,左室短軸径は39.5 mmとした.
【結果】
図に代表的な固有振動モードであるストレッチモードを示す.FVの固有振動数は13.44 Hz,NHでは14.57 Hz,CTでは14.76 Hz,SCTでは15.15Hzであった.NHを基準とした場合,CT,SCTにおいても,固有振動数シフトは各々1.4%,4.0%程度であった.固有振動弾性率計測法による拡張能診断の実用化へ向け,大きな拘束部位があった場合でも境界拘束条件依存性は小さいことが,本研究により明らかとなった.