Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 工学基礎
イメージング・信号処理

(S635)

超音波エコー信号の微分処理を用いる高速ヒルベルト変換

High speed Hilbert’s transform using differentiation for ultrasound echo signal

炭 親良

Chikayoshi SUMI

上智大学理工学部情報理工学科

Dept of Info & Commun Sci, Sophia University

キーワード :

【目的・対象】
過去に報告した多次元信号のヒルベルト変換は,1次元信号の場合にフーリエ変換により得られたスペクトルの非正スペクトルを零にして解析信号を生成する方法を拡張したものである.本来のアナログのヒルベルト変換に対し,デジタル処理が容易であり,高速フーリエ変換を用いて高速に演算できる.本稿では,微分処理を基本としてそれらよりも格段に高速なヒルベルト変換法を報告する.
【方法・結果】
この微分処理を用いるヒルベルト変換は包絡線や反射や散乱により生じる位相変化,超音波周波数の微分値よりも超音波周波数そのものが大きい場合に有効であり,あくまで近似処理である.対象の実時間信号のfast-time-axisに対して微分処理を施して,位相が90°進んだ信号を生成し,-1を乗じて解析信号の虚数成分を計算できる.微分処理によって周波数が乗ざれた分は,元の実時間信号に対して余弦又は正弦信号の逆関数を施して求まる位相にデジタル微分フィルタを掛けるか差分による微分近似処理を施す,又は,さらにもう1階の微分処理をかけて求まる周波数の二乗から計算して求まる.周波数やその二乗にメディアンフィルタや移動平均を掛けることも有効である.精度は低くなるが公称周波数や大局的に推定される周波数(スペクトルの第1次モーメント等)も使用できる.この処理は,通常の包絡線イメージング(解析信号の大きさを求める)や,変位や速度等の計測に応用できる.デジタル回路も使用できるが,信号がアナログの場合はオペアンプ等を使用して実現できる微分フィルタを使用しても良い.本微分処理に基づくヒルベルト変換はステアリングや横方向変調を実施した際の多次元信号においても実施できる.図に寒天ファントムを深さ方向に圧迫した場合や横方向に圧迫した際に横方向変調した場合にて,超音波周波数7.5MHzにて観測した場合にフーリエ変換と微分処理を通じて得たエコー画像と歪(各々,深さ方向と横方向の歪のみ)を示す.平均値やばらつきも示してある.
【考察・結論】
微分処理を通じて得られたエコー画像では深部の包絡線が大きくなった.一方,歪に関しては精度は略同じであった.図中につめもの内で評価された平均値とばらつきを示してある.フーリエ変換を用いる方法に比べて格段に高速であり,データ量の多い3次元イメージングにおいては更に有効であると考えられる.