Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 工学基礎
イメージング・信号処理

(S633)

超音波グレーティングローブのエコーイメージングと組織変位計測への応用

Applications of ultrasonic grating lobes to echo imaging and tissue displacement measurement

炭 親良

Chikayoshi SUMI

上智大学理工学部情報理工学科

Dept of Info & Commun Sci, Sophia University

キーワード :

【目的・対象】
開口面合成は,様々な波動や多方向開口面合成を実現できる[IEEE UFFC, 2008]等,現在でも有用と考えている.フォーカスビームや平面波送信を行う通常のビームフォーミングにおいても多方向に受信することも可能であるが,送信も多方向にステアリングできることは有用である.しかし,通常に比べて受信エコー信号の強度は弱く,デジタル化する際は低ビットであるし,SN比も低い.そこで,本稿では受信後の開口面合成用エコーデータセットに対し,隣接する素子の送信に対する受信信号を足し合わせ,疑似的に大きい物理開口素子より送信した際の受信信号を生成し,エコーイメージングと変位計測を行った.
【方法・結果】
直径5mmの円柱状の詰め物を持つ寒天ファントムを対象にして実験を行った.ここでは,モノスタティックの開口面合成を行った.使用した探触子はリニア型(f=7.5MHz)であり,素子ピッチは0.1mm[12th ITEC, ID: 47,2013]である(装置が不調であったため,エコー信号のSN比が通常よりも低い).素子幅を0.1mm~0.1mm刻みで0.6mmまで変化させ,各々において横方向周波数がf=7.5MHzとなる様に横方向変調を行った.スペクトル図は省略するが,0.4mm素子辺りからグレーティングローブが強く現れる様になった.周波数領域にてグレーティングローブは分離できたがメインローブは横方向に周波数が低くなると共に横方向に狭帯域となった(エコー画像は略).一方で,素子幅を0.5mmとした際に,帯域幅は狭いが横方向に良好に高周波であるグレーティングローブが発生したため,これを抽出し,多次元自己相関法[UFFC, 2008]を用いて変位ベクトル観測を行った.図にはグレーティングローブを除去しなかった場合と他の素子幅で観測された横歪の画像を示す.図中に平均値とばらつきを示すが,それらの中で最も精度が高い.
【考察・結論】
グレーティングローブ(伝搬方向がメインの波動とは異なる波動成分)は周波数領域で除去できたが,メインの波動は狭帯域化されるため,メインの波動のみを用いたエコーイメージングには適していない.一方,横方向に周波数の高い波動成分が狭帯域である効果と合わせて変位ベクトル計測に有効である例を得た.今後はシミュレーションを交えて物理素子幅の設計を行い,応用して行く.