Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 工学基礎
イメージング・信号処理

(S632)

超音波診断装置向け開口合成ビームフォーマ その到達点と課題

Synthetic Transmit Aperture for Medical Ultrasound Beamforming

池田 貞一郎, 石原 千鶴枝, 広島 美咲, 鈴木 麻由美, 久津 将則, 栗原 浩

Teiichiro IKEDA, Chizue ISHIHARA, Misaki HIROSHIMA, Mayumi SUZUKI, Masanori HISATSU, Hiroshi KURIBARA

1株式会社日立製作所研究開発グループ, 2株式会社日立製作所ヘルスケアビジネスユニット

1R&D group, Hitachi Ltd., 2Healthcare Business Unit, Hitachi Ltd.

キーワード :

【背景】
送信開口合成撮像(Synthetic Transmit Aperture: STA)は複数の超音波送信イベントの受信信号を合成することで送信ダイナミックフォーカスによる顕著な方位分解能向上効果を得ることができるビームフォーミング手法である.STAの実用は開口合成レーダに端を発し,超音波撮像の画質向上効果についても古くから知られている.これまでも非破壊検査や水中音響の分野で実用化されている一方で,医用超音波の分野ではSTAの実用化に顕著な進展はなかった.これはリアルタイム撮像と安価かつコンパクトな超音波診断装置の特徴と,STAで要求されるハードウェア性能・規模が見合わないことが主な原因であった.しかしながら,近年ロジックデバイスや大容量メモリをはじめとした電子デバイスの進歩もあり,超音波診断装置へのSTAの実用化機運が高まっている.
医用超音波におけるSTAの実現形態は超音波送信シーケンスの違いにより,以下の3つに大別される.すなわち(1)1 ch(点音源)送信方式(2)平面波送信方式(3)集束ビーム送信方式である.これらの手法は方位分解能やフレームレートなどで一長一短の特徴を持つ.また,医用超音波におけるSTAの課題として,時相の異なる複数の送信イベントを合成することにより,心拍動など高速な運動に対する脆弱性やグレーティングローブの影響が懸念される.STAの実用化に向け,これらの課題の影響を明らかにし,生体での画質向上効果を検証する必要がある.
【目的】
本研究ではSTA撮像の医用超音波Bモード像に対する画質向上効果を明らかにし,更にSTA固有の課題である高速体動によるアーチファクトやグレーティングローブの影響を明確化する.
【方法】
計算機シミュレーションと超音波診断装置によって取得された超音波RFデータを用いた画像エミュレーションを行い,送信開口合成Bモード像を生成する.各種送受信条件と撮像体の運動条件(最大0.5 m/s)を変更し,STA撮像の画質評価を行った.
【結果】
STA撮像では送信間の合成枚数が大きくなると体動の影響が無視できない.また,送信間ピッチや送信フォーカス深度などの送信ビーム条件の組合せによっては,グレーティングローブによる画質劣化の影響が無視できない.一方でこれらの条件を回避した適切な条件下では医用超音波B像のコントラスト分解能および,方位方向分解能を顕著に向上させることができる.