寺田 崇秀, 山中 一宏, 鈴木 敦郎, 坪田 悠史, 武 文晶, 川畑 健一, 佐々木 一昭, 小林 正行

Takahide TERADA, Kazuhiro YAMANAKA, Atsuro SUZUKI, Yushi TSUBOTA, Wenjing WU, Ken-Ichi KAWABATA, Kazuaki SASAKI, Masayuki KOBAYASHI

¹株式会社日立製作所研究開発グループ, ²東京農工大学大学院農学研究院

¹Research & Development Group, Hitachi, Ltd., ²Faculty of Agriculture, Tokyo University of Agriculture and Technology

キーワード :

【目的・対象】
早期乳がんの検出を目的に，計測対象の断層像を取得する超音波CT装置を開発している．超音波CT装置では，水を満たした容器に計測対象を格納し，計測対象の周囲にリング状の超音波振動子アレイを配置して，多方向で生成した反射画像から断層像を再構成する．しかし，振動子アレイと計測対象は同じ容器内に配置することから，生体組織を計測する場合，生体組織から流出する体液等によって振動子アレイが汚染されるリスクがあった．しかし，振動子アレイを容器の外側に配置すると，容器の音響特性が水と異なるため，断層像の分解能が劣化する．そこで，振動子アレイの位置座標に加えて電気信号の応答時間と音響レンズの音響特性も考慮する信号遅延時間の補正技術［1］を，容器を含めた装置全体に拡張し，撮像する手法を検討した．
【方法・結果】
容器の音響特性を音響レンズのそれと同様に，指向性を持つパラメータとして信号遅延時間に組み込み，容器を含めた装置全体の信号遅延時間を補正した．その効果を検証するため，リング状超音波振動子アレイの内側に計測対象を格納する容器を配置したプロトタイプ（図1（a））を製作し，直径0.27mmのワイヤを撮像した．振動子アレイの内径と容器の外径は100mm，容器の厚さは1mmである．容器はポリエチレン製（音速1967m/s）で，送受信する超音波信号の中心周波数は1.5MHzである．容器と振動子アレイの間も水で満たしており，この水は容器内の水と分離している．実験の結果，容器によって計測対象を隔離し取得したワイヤ断層像の平均半値幅は0.79mmとなり，容器の音響特性を含めずに補正した場合の半値幅0.89mmから約1割改善した（図1（b））．これは，容器を用いずに撮像する場合の平均半値幅0.77mmと同程度である．
【考察・結論】
容器を含めた装置全体の信号遅延時間の補正技術を導入することで，ポリエチレン製容器で計測対象を隔離することによる断層像の劣化を抑えることができた．この技術を用いれば，振動子アレイが生体組織から流出する体液等で汚染されるリスクを除去でき，超音波CT装置の管理・運用コスト低減が期待できる．
【参考文献】
［1］T. Terada, et al., Proceedings of Symposium on Ultrasound Electronics, 2P5-5，2016.