Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 運動器・眼科・その他
運動器・眼科・その他

(S629)

超音波検査における皮下腫瘤の血流評価

The assessment of vascularity in subcutaneous tumors by ultrasonography

正畠 千夏, 平井 都始子, 浅田 秀夫

Chinatsu SHOBATAKE, Toshiko HIRAI, Hideo ASADA

1奈良県立医科大学皮膚科, 2奈良県立医科大学総合画像診断センター

1Department of Dermatology, Nara Medical University, Nara, 2Department of General Diagnostic Imaging Center, Nara Medical University, Nara

キーワード :

【背景・目的】
超音波検査は皮膚表面に変化の乏しい皮下腫瘤の診断に有用である.診断にはBモード法とドプラ法による血流の観察が行われるが近年では高周波プローベの普及に伴い,表在の小さな腫瘤の血流も検出可能になってきた.悪性腫瘍では内部に豊富な血流を認めることが多いため良悪性の鑑別に血流評価が有用といわれていきたが,我々は豊富な血流を伴う良性腫瘍をしばしば経験する.皮下腫瘤の超音波所見の特徴を病理組織所見と併せて検討した.
【対象・方法】
当院で2014年4月から2016年3月までの2年間に術前に超音波検査を施行され,病理学的検討をなされた皮下腫瘤114例を対象とした.皮下腫瘤114例中,6例は悪性腫瘍(リンパ腫,肺癌の皮下転移,エクリン汗孔癌など)であり残りの108例は良性腫瘍(表皮嚢腫32例,脂肪腫23例,石灰化上皮腫14例,血管腫7例,肉芽組織6例,神経鞘腫5例,血管平滑筋腫3例,皮様嚢腫3例,反応性リンパ節3例,神経線維腫2例,平滑筋腫2例,血管脂肪腫2例,表在性皮膚脂肪腫性母斑2例,粘液嚢腫2例,汗孔腫1例,外毛根鞘嚢腫1例)であった.
6-15MHzの高周波プローベを用いてBモード法,カラードプラ法を用いて超音波検査を施行し,摘出標本の病理組織検査と比較検討した.腫瘤の辺縁だけでなく腫瘤内部に血流を認める場合を血流陽性とした.
【結果】
良性腫瘍では108例中73例(68%)は血流陰性であり,残りの35例(32%)は血流陽性であった.表皮嚢腫や皮様嚢腫などののう胞性腫瘤ではRuptureした1例を除いて血流はみられなかった.脂肪腫では大きいものでは辺縁にわずかに血流を認めるものもあったが,内部の血流は全例陰性であった.石灰化上皮腫では14例中7例,肉芽組織では6例中5例,神経鞘腫では5例中4例,血管腫7例,血管平滑筋腫3例,平滑筋腫2例,神経線維腫2例,汗孔腫1例,反応性リンパ節3例は全例で血流陽性であり,特に神経鞘腫や血管平滑筋腫,肉芽組織では動脈性の血流も検出された.
悪性腫瘤は6例とも,腫瘤内部の血流表示が陽性であったが,肺癌の皮膚転移などでは腫瘤の中心部は血流が乏しくなっているものもあった.
一部の血管腫や肉芽組織を除いて良性腫瘤はほとんどが辺縁整で境界明瞭であったが,
悪性腫瘤は全例辺縁不整で境界が不明瞭であった.
【結語】
良性腫瘤の中でも血流の豊富な腫瘍は多数認められ,動脈性の血流を認めるものもあった.
皮下腫瘤の診断にはBモード法のみならず,ドプラ法による血流評価が有用である.