Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 運動器・眼科・その他
運動器・眼科・その他

(S628)

麦門冬湯内服後の眼循環動態の検討

Study of ocular hemodynamics after oral Bakumondoto

山田 利津子, 庄田 昌隆, 竹林 英一郎, 山田 誠一

Ritsuko YAMADA, Masataka SHODA, Ei-Ichiro TAKEBAYASHI, Sei-Ichi YAMADA

1聖マリアンナ医科大学、アイソトープ研究室眼科, 2船員保険健康管理センター健康診断科, 3竹林眼科医院眼科, 4東京医科歯科大学国際環境寄生虫病学

1Radioisotope Institute, St. Marianna University School of Medicine, 2Medical Checkup, Seamen’s Insurance AMHTS clinic, 3Ophthalmology, Takebayashi Eye Clini, 4Section of Environmental Parasitology, Tokyo Medical and Dental University

キーワード :

【目的】
麦門冬湯(Mai-men-dong-tang)は,C線維の興奮性を抑制して咳の受容体感受性を抑制する作用,β受容体不活作用による気管支拡張作用,粘液分泌抑制・サーファクタント分泌促進作用,NOによる水チャネルの活性低下に拮抗することによる漿液分泌改善作用などのほか,好中球からの活性酸素抑制やステロイド様作用による抗炎症作用が報告されている.中間症~虚症,燥証を適応症とし,慢性気管支炎,慢性咽頭炎,慢性胃炎,炎症性肺疾患のほかサルコイドーシスや炎症性疾患治療薬として臨床応用されている.また慈潤効果はシェーグレン症候群などで生じる口腔および咽頭粘膜の乾燥にも一定の効果を発揮する.
今回は,麦門冬湯内服後の眼循環動態を超音波パルスドプラ法で検討した.
【対象】
雄Dutch種家兎10匹(体重2.3±0.4kg)を対象とした.
【方法】
麦門冬湯原末(ツムラ: 麦門冬10.0g,半夏5.0g,大棗3.0g,甘草2.0g,人参2.0g,粳米5.0g)0.6,0.06,0.006g/kgは滅菌蒸留水に懸濁して単回内服投与した.投与1・2・4時間後,1・3・7・14日後の各時刻に眼窩内動脈(短後毛様動脈(SPCA),外眼動脈(OA))の流速を測定し,前値と比較した.超音波診断装置はSSA-260(東芝)探触子中心周波数7.5MHzを用い,眼圧測定はトノペンを用いた.電圧変動率算出法のアナロジーで,内服後の各時刻における測定値(x)の,基準値(x0)からの変動率(δx)を算出し,内服前値と比較した.統計学的検討にはMann-WhitneyのU検定,Welch検定を用いた.
【結果】
心拍数の変動率は麦門冬湯投与後2・4時間,1・3日後に有意に高値を示した.0.6g/kg投与群ではSPCAは1日後を頂値とし平均流速変動率が有意な(p<0.0125)上昇を示し,RI変動率は有意な(p<0.0225)下降を示した.OAは1日後を頂値とし平均流速変動率が有意な(p<0.05)上昇を示し,RI変動率は有意な(p<0.0099)下降を示した.
【結論】
麦門冬湯内服投与により,1日後を頂値とした眼窩内動脈の血流量の増加に加えて抗炎症作用が期待される可能性が示唆され,眼科領域における各種閉塞性血管炎を病態とする炎症性疾患治療の補助剤として汎用される事が期待される.