Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 運動器・眼科・その他
運動器・眼科・その他

(S627)

頸部膿瘍合併の咽頭魚骨異物摘出にエコーガイド下が有用であった一例

A case that an ultrasonography was useful for removal of fish bone with the pharyngeal abscess

的野 玲佳, 内田 政史, 東南 辰幸, 角 明子, 明田 亮輔, 三橋 拓之, 梅野 博仁, 安陪 等思

Reika MATONO, Masafumi UCHIDA, Tatsuyuki TONAN, Akiko SUMI, Ryosuke AKEDA, Hiroyuki MIHASHI, Hirohito UMENO, Toshi ABE

1久留米大学放射線医学教室, 2久留米大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座

1Department of Radiology, Kurume University School of Medicine, 2Department of Otolaryngology, Head and Neck Surgery, Kurume University School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
咽頭内魚骨異物は日常診療においてしばし遭遇し,咽頭腔よりさらに深部へ迷入した場合,摘出に難渋する症例もある.今回我々は,魚骨による頸部膿瘍に対して,二度手術が行われるも魚骨摘出ができなかったが,エコーガイド下に行った再手術で魚骨の部位を同定し,迅速に摘出した症例を経験したので文献的考察を加え報告する.
【症例】
患者:40代,男性.
【主訴】
左咽頭部痛及び呼吸困難.
現病歴:数か月前にカレイを摂食後数日間,左咽頭部に痛みを感じたが改善.2日前より咽頭痛と発熱が出現,嚥下困難・呼吸困難も生じてきたため受診.CTにて扁桃周囲膿瘍,気道狭窄および膿瘍部に魚骨と考えられる異物を認め,加療目的で入院となる.
入院後経過:緊急で経口的に扁桃周囲膿瘍切開排膿術,左扁桃摘出および気管切開術を施行したが,術中,魚骨と考えられる異物は確認できなかった.術後も症状が出現し,CTで膿瘍増悪・異物残存が見られた.2日後再手術し,術中,多量の排膿があるも異物は確認できなかった.その後,症状は改善したが,残存異物精査のため施行した超音波検査にて,魚骨と考えられる異物が描出された.初回手術後8日目,エコーガイド下に異物除去術を施行.体外エコーで異物を確認しながら,経口的に異物が迷入している部位の咽頭粘膜の位置を確認した.同部位の咽頭粘膜をCO2レーザーにて切開し,鉗子を切開部に挿入し,エコーガイド下に位置を確認しながら異物を摘出した.異物は長径13mmの魚骨であった.
CT所見(術前):咽頭左側壁は腫脹し,膿瘍形成を認める.さらに深部に異物と思われる線状の高吸収域を認める.
超音波所見:左頸部からの観察で,咽頭部に長さ13mmの索状物を認めた.異物周囲には肉芽様の低エコー域を認める.
【まとめ】
咽頭内の魚骨異物は,しばしば咽頭腔外に迷入し,摘出に難渋することがある.膿瘍は一時改善しても異物が残存していれば再燃し生命にかかわる場合もある.咽頭腔外に迷入した異物を口腔内より直視下で探すのが困難な場合は,画像診断が必要となる.今回の症例は,CT検査で異物を確認できたものの,異物の存在や刺入部を直視下で同定することができなかった.しかし,超音波検査では異物を明瞭に描出し,正確に位置を確認できたため,体外エコーガイド下に口腔内からのアプローチで摘出術を迅速に行えた.異物の同定が困難な場合,エコーガイド下は有用な方法であると考えられた.