Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 運動器・眼科・その他
運動器・眼科・その他

(S627)

軟部組織感染症の超音波検査 手術適応における膿瘍を示唆する所見の重要性について

Ultrasound of Soft Tissue Infection: Findings suggestive of abscess as the indication of surgical intervention

佐次田 保徳

Yasunori SASHIDA

沖縄県立北部病院形成外科

Department of Plastic Surgery, Okinawa Prefectural Hokubu Hospital

キーワード :

【目的】
表在領域の超音波検査の発展は目覚ましいものがある.今回,当科初診の軟部組織感染症において,膿瘍を示唆する超音波所見の有無により,ドレナージやデブリドマン手術の適応を決めて取り扱った17例につき検討を加えた.
【対象と方法】
2013年11月より2016年10月までの間に,殿部褥瘡感染,体表10%以上に及ぶ広範囲感染症,手指化膿性腱鞘炎を除く当科初診の軟部組織感染症で,初療から超音波検査が行われた症例は17例に検討を加えた.そのうち,軽い圧迫で変形あるいは消失しうる液貯留を示唆する低輝度陰影か,内部に粒状の陰影が認められる類円形の嚢胞性陰影を膿瘍を示唆する所見とし,それが認められる症例に対して,切開排膿やデブリドマン手術を行った.軟部組織感染症で壊死性筋膜炎の診断に至った場合は,超音波検査の結果に関わらず,デブリドマン手術を行う方針であったが,調査期間中,体表の10%以下の壊死性筋膜炎を経験しなかった.症例は6才から87才で,原因は,創感染,動物咬傷,粉瘤など嚢胞性腫瘍感染,先天性耳瘻孔など多岐にわたっていた.感染箇所も多岐にわたり,顔面2例,頭皮1例,耳介2例,肘1例,前腕1例,指2例,その他の手感染4例,膝2例,足2例であった.
【結果】
3例は上記の膿瘍所見を認めず,抗生剤の投与にて軽快した.14例では膿瘍所見を認めたため,ドレナージやデブリドマン手術が行われた.14例中,13例で細菌培養が行われ,10例で術中に提出された膿性の貯留液体から菌が検出された.培養が陰性であった3例では,既に丸1日以上の抗生剤投与が行われていた.非手術例3例ともに抗生剤の投与にて早急な軽快,治癒に至った.また,手術例14例も,再発をみることなく,肥厚性瘢痕や手指拘縮などの後遺障害も残さなかった.
【考察】
軟部組織感染症では,明らかな壊死性筋膜炎の診断に至れば,早急なデブリドマンが必要である.しかし,それ以外の場合,抗生剤などで保存的加療が可能なのか,外科的処置に踏み込むべきなのかにつき逡巡することも多い.今回,軟部組織感染症を取り扱うにあたり,超音波検査を実施し,軽い圧迫で変形あるいは消失しうる液貯留を示唆する低輝度陰影か,内部に粒状の陰影が認められる類円形の嚢胞性陰影を膿瘍を示唆する所見とし,その有無により外科的処置の是非を判断し,良好な結果を得ることができた.また,重症の蜂窩織炎で広範囲に発赤を伴い,皮下,筋膜上に広範囲な浮腫を認めた場合でも,膿瘍を示唆する所見が無ければ,抗生剤にて保存的に加療することが可能であった.