Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 運動器・眼科・その他
運動器・眼科・その他

(S626)

橈骨遠位端骨折後の掌側プレート接触によるFPL腱の摩耗をパルスドプラーでの評価

Evaluation of FPL tendon wear by pulsed Doppler by volar contact with volar side plate after fracture of radius distal end

前山 美誠

Misato MAEYAMA

大阪掖済会病院放射線科

Department of Radiology, Osakaekisaikai Hospital

キーワード :

【目的】
橈骨遠位端骨折の掌側プレート固定の合併症として長母指屈筋(FPL)腱断裂が問題視されている.近年,FPL腱摩耗の有無の評価がプレート抜去の適応決定に有用との意見があり,触診や聴診器による評価法が報告されている.しかし,渉猟し得た範囲では腱摩耗の存在を視覚的に評価できる方法は報告されていない.今回,我々は超音波Doppler法を用いたFPL腱摩耗の有無を視覚的に評価したので,その有用性について検討した.
【対象と方法】
橈骨遠位端骨折に対し掌側ロッキングプレート固定を施行された60例60手を対象とした.平均年齢は65.1歳(- 歳).プレート固定から超音波検査までの期間は平均9.1カ月(3.5-24カ月)であった.
腱断裂や感染等の重大な合併症を生じた症例は認めなかった.超音波検査では前腕回外位・手関節背屈30度に固定し,母指はフリーとした.パルスDoppler法を用いプレート遠位端部でFPL腱内にサンプルボリュームを設定しFPL腱滑走時Doppler波形を評価した.さらにプレート抜釘術を施行した25例では抜釘時にFPL腱の損傷の有無を評価した.腱にfrayingや部分断裂を認めた場合,損傷ありと評価した.
【結果】
FPL腱のDoppler波形は以下の3typeに分類できた.Type 1:紡錘型,Type 2:紡錘+スパイク型,type 3 :スパイク型.健側ではType 1 :56手,Type 2 :4手,Type 3:0手,患側ではType 1 :33手,Type 2 :21手,Type 3 : 6手で,Type 3は患側のみでしか認めなかった.抜釘を施行した25手ではDoppler波形Type 3であった5手中3手でFPL腱損傷が確認できた(2手:fraying,1手:部分断裂)が,Type 1または2の20手では腱損傷は認めなかった.Type 3の5手は全例で抜釘後の評価で波形がtype 1または2に変化していた.
【考察】
本研究ではDoppler波形type 3は健側では認めていないこと,実際にFPL腱損傷が確認できたのがtype 3の3手のみであったこと,抜釘をしたtype 3の5手全例で抜釘後にtype 1または2に波形が変化したことからtype 3は異常所見と考える.
【結語】
Doppler波形によるFPL腱摩耗の評価は可視化でき有用と思われた