Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 血管
血管2

(S624)

医原性大腿動静脈瘻の超音波診断と形態的評価

ultrasound diagnosis and morphological assessment of iatrogenic femoral arteriovenous fistula

大西 達也, 福留 啓佑, 宮城 雄一, 寺田 一也, 太田 明

Tatsuya OONISHI, Keisuke FUKUDOME, Yuichi MIYAGI, Kazuya TERADA, Akira OHTA

四国こどもとおとなの医療センター小児循環器科

Department of Pediatric Cardiology, Shikoku Medical Center for Children and Adults

キーワード :

【緒言】
穿刺による医原性大腿動静脈瘻の頻度は少ないが稀ではない.臨床症状は多彩で,瘻の大きさ,罹患動脈の大きさや瘻発生からの期間により異なり,患側の静脈圧が上昇し,静脈瘤,浮腫,心不全や脚長差が認められることがある.自験例では,鼠径部のthrill,患側大腿の腫脹などを初発に,超音波診断法(UD)で早期の診断が可能であったが,3例とも瘻形成の過程に相違があると考えられた.
【症例】
症例1は単心室症の5歳女児.心臓カテーテル検査(CC)の14か月後から右鼠径部のthrillと運動後の右下肢腫脹を認め,UDで浅大腿動脈と大腿静脈本幹間の動静脈瘻を診断した.症例2は823gで出生した1歳女児.ファロー四徴症術後CCの5か月後から患側大腿の腫脹を契機に,患部のthrillを確認しUDで浅大腿動脈背側から外側大腿回旋静脈への動静脈瘻を診断した.症例3は1歳11か月の男児.ファロー四徴症術後にCCを行ったが,翌日から右鼠径部にthrillを聴取し,UDで浅大腿動脈から背側の外側大腿回旋静脈間の動静脈瘻を診断した.3例とも血管形成術を施行され臨床症状は軽快した.
【考察】
症例1は生後1か月時に右鼠径部cut downによる心房中隔裂開術の既往がある.癒着により前後に位置関係が変化した動静脈を貫通するように穿刺したことが原因であった.症例2は長期のPIカテーテル留置の既往がある.浅大腿動脈周囲の静脈系の怒張が極めて著しかったため,血管造影検査を用いて静脈系の精査を追加し,右総腸骨静脈の狭窄を認めた.PIカテーテル静脈炎による血管狭窄で静脈系が拡大していたことが動静脈瘻形成の誘因となった.症例3は浅大腿動脈下位での瘻形成であり,穿刺部位が著しく尾側であったことが原因であった.
【結語】
症例によって鼠径部の血管走行は多様であるが,大腿動静脈系に変化を及ぼす既往処置がある場合には,事前に大腿動静脈周囲の形態を超音波画像で把握しておくことが重要である.また本症にはUDが極めて有用である.