Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 血管
血管2

(S624)

うっ血性心不全患者における腎血流評価

Evaluations of renal blood flow in congestive heart failure

安田 英明, 坪井 英之, 吉田 路加, 高木 健督, 森田 康弘

Hideaki YASUDA, Hideyuki TSUBOI, Ruka YOSHIDA, Kensuke TAKAGI, Yasuhiro MORITA

1大垣市民病院診療検査科血管専門検査室, 2大垣市民病院循環器内科

1Vascular Laboratory, Ogaki Municipal Hospital, 2Cardiology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【背景】
うっ血性心不全では,他臓器との関連が注目されており,心腎関連はよく研究されている領域である.しかしながら,その評価は,中心静脈圧の測定で行われ,腎臓内血行動態の評価については,あまりなされていない.
【目的】
超音波ドプラ法で得られる腎葉間動脈のRI(resistance index),葉間静脈のVII(venous impedance index)と各種腎機能指標,心機能指標との関連性を調べ,腎うっ血を評価する.
【対象および検査方法】
対象は,平成28年7月から11月の5ケ月間で,当院循環器内科にて,うっ血性心不全と診断された患者,およびうっ血性心不全疑いとされた患者150例とした.性別は男性94例,女性56例,年齢は32~93歳で平均75.3歳であった.検査方法は,コンベックスプローブを用いて,腎臓の形態を観察し,パルスドプラ法にて腎葉間動脈のRI,葉間静脈のVIIを算出した.また,腎動脈本幹の狭窄の有無を確認した.血液検査,尿検査,心エコー図検査を可能な限り同日に行った.
【検討方法】
(1)腎葉間動脈のRI値と推算糸球体濾過量(eGFR),血清尿素窒素(BUN),クレアチニン(CRE),尿中β2マイクログロブリン(β2MG),尿中Nアセチルグルコサミニダーセ(NAG),心エコー図による左室駆出率(LVEF),左室拡張能(LV E/e’),推定右室圧(RVp),三尖弁輪収縮期移動距離(TAPSE),脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)とで直線回帰分析を行った.
(2)腎葉間静脈のVII値についても同様に行った.
(3)葉間静脈の波形を連続波形群と途絶波形群に分けて,β2MG,NAGを各々2郡間で比較した.
【結果】
(1)RIと腎機能指標との関係は,eGFRとの間に負の相関を,BUNとの間に正の相関を認めた.また,CREとの間に弱い正の相関を認めた.β2MG,NAGとの間には有意な相関関係を認めなかった.心機能指標との関係は,LV E/e’,RVp,BNPとの間に弱い正の相関を,TAPSEとの間に弱い負の相関を認めた.LVEFとの間には有意な相関関係を認めなかった.
(2)VIIと腎機能指標との関係は,BUNとの間に正の相関を,eGFRとの間に弱い負の相関を認めた.CRE,NAG,β2MGとの間には有意な相関関係を認めなかった.心機能指標との関係は,RVpとの間に正の相関を,BNPとの間に弱い正の相関を,TAPSEとの間に負の相関を認めた.LVEF,LV E/e’,との間には有意な相関関係を認めなかった.
(3)葉間静脈波形の途絶波形群と連続波形群の間でVIIは,β2MGには有意差を認めなかったが,NAGは,途絶波形群が連続波形群より有意に高値を示した.
【考察】
本研究で,腎内血行動態は動静脈共に左右の心機能,圧に大きく影響されていることが明らかになった.特にVIIは,右心系圧上昇により有意に上昇し,腎のうっ血状態を鋭敏に表していると考えられた.VII高値を表す途絶波形群で,腎髄質障害指標のNAGが有意に高値であったことは,これを裏づけていた.RIと糸球体機能が関連していたが,糸球体硬化が進行するとRIが上昇することが示唆された.また,RIは左室収縮性とは関係なく右心機能低下と関連があった.これは,うっ血による髄質虚血も腎動脈抵抗にある程度影響をおよぼしているためと思われた.本検査は,非侵襲性で簡便であるが,連続3心拍以上の息止めが必要であることや,消化管の影響を受ける場合や高度肥満例では評価が困難である等の問題点も挙げられる.
【結語】
うっ血性心不全症例において,腎葉間動静脈ドプラ波形から,腎内の血行動態,特に腎うっ血とそれによる腎髄質虚血状態を容易に観察することが可能で,今後同検査は心不全の病態把握には必須と思われた.