Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 血管
血管2

(S623)

卵円孔開存症の診断における頸動脈超音波検査の有用性

Usefulness of Pulse-Doppler ultrasound of internal carotid artery for diagnosis of patent foramen ovale

鈴木 綾乃, 竹川 英宏, 鈴木 圭輔, 岡部 龍太, 塚原 由佳, 岩崎 晶夫, 岡村 穏, 飯塚 賢太郎, 五十嵐 晴紀, 平田 幸一

Ayano SUZUKI, Hidehiro TAKEKAWA, Keisuke SUZUKI, Ryuta OKABE, Yuka TSUKAHARA, Akio IWASAKI, Madoka OKAMURA, Kentarou IIDUKA, Haruki IGARASHI, Kouichi HIRATA

1獨協医科大学神経内科脳卒中部門, 2獨協医科大学超音波センター, 3獨協医科大学神経内科, 4公立阿伎留医療センター内科

1Stroke Division, Department of Neurology, Dokkyo Medical University, 2Center of Medical Ultrasonics, Dokkyo Medical University, 3Department of Neurology, Dokkyo Medical University, 4Department of Internal Medicine, Akiru Municipal Medical Center

キーワード :

【目的】
奇異性脳塞栓症は,主に下肢深部静脈血栓が卵円孔開在症(PFO)などの右左シャント(RLs)を介して脳頸部動脈を閉塞することで発症する.このためRLsを証明するため経食道心臓超音波検査(TEE)や経頭蓋超音波ドプラ検査(TCD)が必要となる.しかし肝硬変患者では食道静脈瘤の点からTEEが困難であり,高齢女性ではTCDが不可能な症例が存在する.そこでわれわれは頸動脈超音波検査(C-US)を用い内頸動脈(ICA)でRLsの評価が可能か検討した.
【対象と方法】
虚血性脳卒中で入院し,原因検索目的でTEEおよびC-USを施行した連続73例(平均年齢56.6歳)を対象とした.TEEによるRLs診断は,1)Valsalva負荷のみでの観察,2)Valsalva負荷に右肘静脈から生理食塩水9mlと空気1mlを攪拌したコントラスト剤を注入した観察,3)コントラスト剤注入のみでの観察,を行った.右房内と同輝度の左房内粒状エコーが2)においてValsalva負荷解除3心拍以内に出現すればPFOと診断し,4心拍以後に出現して3)で観察された場合は肺動静脈瘻(PAVF)またはPFOと診断した.C-USによるRLs診断はセクタ型探触子(2-7.5MHz)で右ICAのパルスドプラ法を用い,微小栓子シグナル(MES)の出現を評価した.TEEと同様の方法で観察し,2)においてValsalva負荷解除後にMESが出現した場合はPFOと診断し,3)で出現した場合はPAVFまたはPFOとした.また,PFOの径はTEEにおいて左房内に出現した粒状エコーの最大数が5個以下の場合を「小」,6-25個を「中」,26個以上を「大」と定義した.TEEをもとにC-USにおけるRLs診断の感度,特異度,陽性的中率(PPV)および陰性的中率(NPV)を算出した.
【結果】
TEEでPFOは20例に観察され,全てPFOであった.またPFOの径は「小」が3例,「中」が7例,「大」が10例であった.C-USでMESが出現したのは34例であり,全例PFOと診断した.C-USによるPFOの診断率は感度85.0%,特異度67.9%と高い診断率であったが,PPV 50.0%と低く,NPVが92.3%高率であった.一方,PFOの径が「小」および「中」であった10例を除外した63例でみると,C-USの診断率は感度80.0%,特異度67.9%,PPV 32.0%,NPV 94.7%であった.
【考察と結論】
C-USで右ICAを用いたRLs診断率を検討し,その結果低いPPVと高いNPVが得られ,C-USではRLs,とくにPFOの否定に有用であることが示された.Censoriら1)はPFO診断でTCDによる中大脳動脈とC-USの総頸動脈(CCA)で比較検討した結果,シャント径が大きい例においてC-USは感度95.3%,特異度100%,PPV 100%,NPV 96.6%であることを報告している.右ICAを用いたわれわれの検討ではPFOの径が「大」であってもPPVは低率であり,外頸動脈にコントラスト剤が多く流入している可能性がある.本検討ではCCAの評価は施行していないが,ICAとCCAの評価でMESが出現しない場合,PFOの否定が高い精度で可能と推察される.結論としてValsalva負荷およびコントラスト剤を用いたC-USは,PFOを否定するのに有用である.
【参考文献】
1)Censori B, et al. Ultrasound Med Biol 2010;36:566-570.