Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 血管
血管1

(S622)

担癌患者における下肢深部静脈血栓症の超音波性状による肺血栓塞栓症リスク評価の試み

Risk evaluation for PTE by ultrasound diagnosis of DVT in cancer patients

宮﨑 さや子, 三栖 弘三, 松野 徳視, 西浦 明穂, 野村 浩祐, 吉岡 ふみ, 向井 幹夫, 大川 和良

Sayako MIYAZAKI, Kouzou MISU, Noritoshi MATSUNO, Akiho NISHIURA, Kousuke NOMURA, Fumi YOSHIOKA, Mikio MUKAI, Kazuyoshi OHKAWA

1大阪国際がんセンター(旧大阪府立成人病センター)臨床検査科, 2大阪国際がんセンター(旧大阪府立成人病センター)検診部消化器検診科, 3大阪国際がんセンター(旧大阪府立成人病センター)肝胆膵内科・超音波室, 4大阪国際がんセンター(旧大阪府立成人病センター)腫瘍循環器科

1Clinical Laboratory, Osaka International Cancer Institute(formerly Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases), 2Gastrointestional Cancer Screening and Surveillance, Osaka International Cancer Institute(formerly Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases), 3Hepatobiliary and Pancreatic Oncology,Ultrasonography, Osaka International Cancer Institute(formerly Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases), 4Onco-Cardiology, Osaka International Cancer Institute(formerly Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases)

キーワード :

【目的】
肺血栓塞栓症(以下PTE)は大部分が下肢および骨盤腔内静脈の血栓が塞栓源となることは周知されている.今回,担癌患者において,下肢エコー検査で下肢深部静脈血栓症(以下DVT)を認めた症例について,DVTの存在部位と超音波性状から,PTE発症のリスク評価が可能かどうかを検討した.
【対象と方法】
対象は2014年10月~2016年9月までの2年間に当院で癌治療期,あるいは周術期にDVTが疑われ下肢エコー検査を施行し,DVTを認めた患者199例で,周術期症例91例と癌治療期(非周術期)症例108例について各々PTE発症群と非発症群に分けて評価した.PTE発症群は,臨床的PTE発症前後2日以内に下肢エコーが施行されている例を評価対象とした.検査体位については限定しなかった.血栓部位は中枢型と末梢型に分類し,血栓性状評価は日本超音波医学会標準的超音波診断法に準じたが,加えて以下の所見を呈するものについては亜急性期血栓と定義した.①圧迫法でわずかな非完全圧縮を呈し,径は並走動脈より太いか,閉塞様であっても径が並走動脈と同等であるもの.②カラードプラでわずかに血流を認めるもの,③下腿については低輝度でかつ中枢側の膝窩静脈よりも径が太くないもの.
【結果】
周術期DVT陽性91例の患者背景は平均年齢69.2歳,男性29例,女性62例,平均手術時間5時間50分で,内訳はPTE発症群19例,非発症群72例であった.血栓部位に関しては,PTE発症群では非発症群に比して中枢型の頻度が高く(9/19,47%vs. 13/72,18%,p=0.019),血栓性状はPTE発症群では急性期9例(47%),亜急性期5例(26%),慢性期5例(26%),PTE非発症群では急性期9例(13%),亜急性期7例(10%),慢性期56例(78%)であり,PTE発症群では急性期・亜急性期血栓の頻度が高かった(p<0.001).
癌治療期(非周術期)DVT陽性108例の患者背景は平均年齢68.2歳,男性43例,女性65例で,内訳はPTE発症群12例,非発症群96例であった.血栓部位に関しては,PTE発症群では非発症群に比して中枢型の頻度が高く(9/12,75%vs. 37/96,39%,p=0.036),血栓性状はPTE発症群では急性期7例(58%),亜急性期5例(42%),慢性期0例(0%),PTE非発症群では急性期13例(13%),亜急性期14例(15%),慢性期69例(78%)であり,PTE発症群では急性期・亜急性期血栓の頻度が高かった(p<0.001).
【考察】
PTE発症群は,周術期,癌治療期(非周術期)どちらにおいても血栓部位では中枢型の頻度が有意に高く,血栓形状に関しては急性・亜急性の頻度が有意に高かった.
血栓性状を急性期と慢性期のみで分類するよりも,内腔がわずかに開通した亜急性期血栓と考えられる性状においても,結果に示す頻度でPTEを発症していることから,亜急性期のカテゴリーを加えて分類するほうがPTEリスク評価には検査精度が上がると考えられた.
【結語】
DVT存在部位と超音波性状を詳細に評価することで,PTE発症リスク評価に寄与できると考えられた.特に亜急性期血栓を拾い上げることで検査精度が上がる可能性が示唆された.