Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 血管
血管1

(S621)

深部静脈血栓症における下肢静脈超音波検査の有用性-CT・D-dimerとの比較検討

Superiority of venous ultrasonography for detecting deep vein thrombosis to computed tomography and D-dimer

風間 知之, 西山 悟史, 吉田 由美子, 渡邉 哲, 橋本 直土, 山浦 玄斎, 和根崎 真大, 田村 晴俊, 森兼 啓太, 久保田 功

Tomoyuki KAZAMA, Satoshi NISHIYAMA, Yumiko YOSHIDA, Tetsu WATANABE, Naoto HASHIMOTO, Gensai YAMAURA, Masahiro WANEZAKI, Harutoshi TAMURA, Keita MORIKANE, Isao KUBOTA

1山形大学医学部附属病院検査部, 2山形大学医学部附属病院第一内科

1Department of Clinical Laboratory, Yamagata University Hospital, 2Department of Cardiology, Pulmonology, and Nephrology, Yamagata University Hospital

キーワード :

【背景・目的】
深部静脈血栓症(DVT)は,手術・癌・長期臥床などを誘因として,無症候性から致死的な肺血栓塞栓症(PE)まで,多彩な臨床像を示す.近年PEおよびDVTの発症率が増加している.下肢静脈超音波検査(US)はDVT診断に有用である.しかしUSの有用性をCTおよびD-dimerとの関係を比較した報告は少ない.今回我々は,DVT診断におけるUSの有用性をCTおよびD-dimerと比較検討した.
【方法】
2014年1月から2016年12月の間に当院でDVTが疑われ,US・CT・D-dimerを各々1週間以内に測定した連続238例(男性75名,女性163名,平均年齢63.8±14.7歳)を対象とした.超音波診断装置はAplio400,500(東芝社製)を用い,プローブは7.5MHzのリニア型を大腿・下腿領域に,6.0MHzのコンベックス型プローブを腹部・腸骨領域に使用し,日本超音波医学会の下肢深部静脈血栓症の標準的超音波診断法に基づきDVT評価を行った.CTは当院におけるDVT診断用の撮影プロトコルに従って行われ,検査時に血栓を認めた症例(CT確実例)および血栓が疑われた症例をCT陽性例として検討した.D-dimerはラテックス比濁法を用いて測定された.最終的なDVT診断は,循環器専門医の判断のもと行われた.
【結果】
直前の手術歴を有する症例は164例であり,DVTを認めた症例は94例(39.5%)であった.また29例にPEを認め,そのうち1例のみCTでもUSでもDVTを認めなかった.D-dimerはPEやDVTの有無にかかわらず,直前の手術歴を有する症例で有意に高値であった.そこで直前の手術歴の有無で2群に分けて検討すると,手術歴のない群ではPE症例においてD-dimerが有意に高値であった.D-dimerを5.0μg/mlで2群に分けると,手術歴の有る群・無い群ともに,D-dimer高値症例において有意にDVTおよびPE症例の割合が多かった.しかしD-dimerが基準値(1.0μg/ml)以下の12症例においても,6症例にDVTを認め,うち3症例はUSのみ血栓を認めた.USにおけるDVTの感度は88.3%,特異度は100.0%(陽性・陰性的中率は100.0%・92.9%),CTにおけるDVTの感度は73.4%,特異度は93.8%(陽性・陰性的中率は88.5%・84.3%)であった.CTにて偽陽性となった9例はすべて血栓が疑われた症例にて,CT確実例のみで検討すると特異度および陽性的中率は100%となったが,感度は73.1%であり,有意にUSより低値であった.そこでDVTをCTで認めずUSのみで認めた25症例を検討してみると,有意にBelow Knee(膝下領域)病変が多く(84.0%vs. 66.1%),器質化病変の割合が高値であった.
【結論】
D-dimerは患者背景により修飾され易く,DVT診断においては偽陽性になりやすかった.CTはDVTに対する特異度は高かったが,USに比し感度において劣っており,DVT診断においてUSが最も有用である可能性が示唆された.