Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 血管
血管1

(S621)

当院VTE予知・予防・治療ガイドラインの臨床効果とその検証

Clinical efficacy and its verification of Guidelines for VTE prediction, prevention, and treatment in our hospital

野津 泰子, 矢野 彰三, 新田 江里, 福間 麻子, 山口 一人, 三島 清司, 石橋 豊, 長井 篤

Yasuko NOTSU, Syozo YANO, Eri NITTA, Asako FUKUMA, Kazuto YAMAGUCHI, Seizi MISHIMA, Yutaka ISHIBASHI, Atsushi NAGAI

1島根大学医学部附属病院検査部, 2島根大学医学部附属病院臨床検査医学, 3島根大学医学部附属病院総合医療学

1Laboratory Medicine, Shimane University Hospital, 2Faculty of Medicine, Shimane University Hospital, 3Department of General Medicine, Shimane University Hospital

キーワード :

【背景】
静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism;VTE)は深部静脈血栓症と(DVT)と肺塞栓症(PTE)をあわせた疾患概念である.当院では共通リスク評価と診療科別および血栓素因からのリスク評価を組合せた独自のVTE予知・予防・治療ガイドライン(GL)を作成し,2013年8月にカルテ上で全ての入院患者に対してVTEリスク評価を入力するようにシステム変更を行った.しかし,リスク評価の実施率が低いためGLの見直しが行われることになった.そこで今回,下肢静脈エコーの現状の把握と有用性を調査するため,GLで評価項目としたDダイマー(DD)と下肢静脈エコーとの関連性を検討した.
【目的】
GL導入前後における新規VTE発症の推移と重症度を調査することにより,GL導入による臨床効果とDDカットオフ値の妥当性について検証する.
【対象】
2010年8月から2014年7月の期間に下肢静脈エコーを施行した患者2,957人.
【方法】
エコーで新鮮血栓の有無,造影CTの結果,症候等に基づいて,新規DVTおよびPTEの診断を確認し,年度別の発症数を明らかにした.新規VTE・PTE発症の有無によるDD値の比較を行った.さらに,ROC解析によりDDの新規VTE・PTE診断に対する感度・特異度およびカットオフ値を求めた.
【結果】
下肢静脈エコー件数は毎年増加していた.全患者2,957人のうち血栓を認めたのは795人(27%),新規VTE患者は265人(9%)であった.下肢静脈エコーで血栓がみつからなくても造影CTなど他の検査により上肢,骨盤内,肺動脈で見つかる例もあった.GL導入後のVTE発症率は,導入以前と比較してより高率であり,検査の絶対数の増加により発見率が高まった可能性が考えられた.また,PTEなど重症例の発見にもつながっていることが示された.新規DVT発症に対するROC解析では,DD5.7において,感度42.7%,特異度73.1%,陽性的中率13.9%,陰性的中率92.7%という結果であった.次に,PTE診断に対するROC解析では,DD7.4において,感度51.4%,特異度78.3%,陽性的中率3%,陰性的中率99.2%であった.
【考察】
新規VTEの発症率は当院GLの導入前後で上昇していることが明らかとなったが,積極的なDD測定と下肢静脈エコーによる発見率の上昇が原因と思われた.また,VTE診断において,DDは高い陰性的中率を示した.これらの結果は,当院GLの改訂にあたり,下肢静脈エコーおよびDD値の位置付けにおいて,少なからず貢献できたと考えている.