Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 血管
血管1

(S620)

当院における下肢静脈瘤レーザー治療後の血栓合併症の検討

Consideration of EHIT(endovenous heat-induced thrombus) after Endovenous laser treatment for varicose vein in our center

大久佐 紀子, 鈴木 将慶, 杉本 京美, 池田 由利子, 清水 理葉, 松下 恭, 原澤 寛

Noriko OKUSA, Masayoshi SUZUKI, Kyoumi SUGIMOTO, Yuriko IKEDA, Riha SHIMIZU, Yasushi MATSUSHITA, Hiroshi HARASAWA

1獨協医科大学日光医療センター臨床検査部, 2獨協医科大学日光医療センター心臓・血管外科, 3獨協医科大学日光医療センター呼吸器内科

1Clinical Laboratory Department, Dokkyo Medical University Nikko Medical Center, 2Department of Cardiac and Vascular Surgery, Dokkyo Medical University Nikko Medical Center, 3Department of Respiratory Medicine, Dokkyo Medical University Nikko Medical Center

キーワード :

【はじめに】
下肢静脈瘤に対する治療は長い間ストリッピング手術であったが,近年欧米では血管内レーザー治療が広く普及している.本邦では2011年に波長980nm半導体レーザー治療が,2014年に波長1470nm半導体レーザー治療がそれぞれ保険適応となった.当院では2013年からレーザー治療を開始し,患者数も増加傾向にある.そこで合併症の一つであるEndovenous heat-induced thrombus(以下EHIT)について検討した.
【対象と方法】
2013年6月から2016年10月までに当院で下肢静脈瘤レーザー治療を行った一次性静脈瘤患者で,手術翌日・1週後・1か月後に超音波検査を施行しえた129名,159肢(大伏在静脈130肢,小伏在静脈29肢)を対象とした.平均年齢66.4歳(31歳~90歳),男女比1:1.7.装置は980nm半導体レーザー(2013年6月10日~2015年10月18日まで),1470nm半導体レーザー(2015年10月19日~2016年10月31日まで)を使用した.EHITはKabnicらが提唱した分類に従ってClass1(以下C1),Class2(以下C2),Class3(以下C3),Class4(以下C4)に分類した.
【結果】
レーザー治療翌日にEHITを認めたのは2肢(C1が2肢),1週後で16肢(C1が11肢,C2が2肢,C3が3肢),1か月後で0肢であった.C1は弾性ストッキング着用のみで経過観察とした.1か月後の超音波検査でC1の13肢中12肢のEHITは消失した.残り1肢は粘調性の可動性エコーを認めた.C2とC3は抗凝固薬の内服で,1か月後にEHITは消失した.EHITの割合はC1が8.2%,C2が1.3%,C3が1.9%,C4が0%であった.レーザー波長の違いによるEHITの割合は,980nmが5.8%(52肢中3肢;C1が3肢),1470nmが14.0%(107肢中15肢;C1が10肢,C2が2肢,C3が3肢)であった.
【考察】
当院では日帰り,もしくは1泊2日の下肢静脈瘤レーザー治療を行っている.日本静脈学会による下肢静脈瘤に対する血管内治療のガイドラインでは,72時間以内および術後1~3カ月以内の超音波検査を推奨しているが,全例24時間後に施行した.今回の検討ではEHITは術後翌日から1週以内に発生していた.1週以内に発生したC1の91%は1か月後に自然消失していたことから,C1は弾性ストッキングの着用のみで十分と思われた.C2とC3は抗凝固薬の内服で1か月後に消失した.抗凝固療法はC3以上で行っている施設もあり今後の検討が必要であると思われた.1か月後に粘調性の可動性エコーを認めた1例は抗凝固療法を行ったが3か月後も可動性エコーを認め,5か月後に器質化した血栓となり現在も経過観察中である.術前の凝固検査で異常を認めていなかった.レーザー波長の違いでは,1470nmは980nmと比較して術後疼痛の軽減や再発率の改善が得られるとの報告があるが,EHITに関しては980nmで発生率が低く,全てC1であった.1470nmの手技の習熟度の違いは認めなかった.全ての症例で術後1か月以内に焼灼した大伏在静脈に再疎通は認めなかった.深部静脈血栓症,肺塞栓症,神経障害の合併症は認めなかった.
【結語】
当院の下肢静脈瘤レーザー治療後のEHITについて検討した.重篤な合併症を防ぐために超音波検査は重要であり,EHITを発生した際の適切な処置と超音波検査での定期的な経過観察が必要であると思われた.