佐藤 寛之, 中原 慶, 手塚 尚美, 久保田 久子, 金子 朋広, 佐野 雅之, 尾形 吉彦, 塩路 豪, 佐藤 三洋, 吉田 寛

Hiroyuki SATO, Kei NAKAHARA, Naomi TEDUKA, Hisako KUBOTA, Tomohiro KANEKO, Masayuki SANO, Yoshihiko OGATA, Gou SHIOJI, Mitsuhiro SATOU, Hiroshi YOSHIDA

¹日本医科大学多摩永山病院中央検査室, ²日本医科大学多摩永山病院泌尿器科, ³日本医科大学多摩永山病院外科

¹Department of Central Llaboratory, Nippon Medical School Tama Nagayama Hospital, ²Department of Urology, Nippon Medical School Tama Nagayama Hospital, ³Department of General Surgery, Nippon Medical School Tama Nagayama Hospital

キーワード :

【目的】
現在，前立腺肥大症における体外的前立腺超音波検査は，主に前立腺容積と残尿量の計測を目的として施行されている．今回，我々は前立腺動脈尿道枝の血流速度を測定することにより，前立腺肥大症における超音波検査の有用性について検討した．
【対象】
平成25年10月から平成26年11月までに前立腺肥大症で当院泌尿器科を受診し，体外的前立腺超音波検査を施行した52名，年齢57歳から91歳（平均年齢74.4歳）の男性患者を対象とした．
【使用機器】
超音波診断装置SSD-790A（東芝メディカル），プローブ3.5MHzコンベックスプローブ（PVT-375BT）を使用した．
【方法】
膀胱充満法にて体外的超音波検査法で前立腺を描出し，カラードプラ法により前立腺動脈尿道枝を確認後，パルスドプラ法にて血流速度を測定した．なお，測定項目は収縮期最大血流速度（PSV），拡張期血流速度（EDV），抵抗係数（RI），収縮期最大血流速度／拡張期血流速度（S/D）を使用し，前立腺全容積（WZV），移行体容積（TZV），移行体容積比（T/W），残尿量（RUV）と比較検討した．
【結果】
①超音波所見：検査対象とした52例の前立腺容積（Ave．±SE）はWZV 51.8±21.3ml，TZV 24.0±13.4ml，T/W 0.45±0.10であった．異常所見はstrong echo（+）46/52例，cystic lesion（+）20/52例，mass lesion（+）9/52例，前立腺膀胱内突出像（+）23/52例であった．②相関関係：PSVとEDVは前立腺容量，残尿量と相関関係はみられなかったが，RIはTZVと（γ=0.3617，p=0.0084），T/Wと（γ=0.4044，p=0.0030），RUVと（γ=0.4906，p=0.0004），S/DはWZVと（γ=0.3349，p=0.0152），TZVと（γ=0.4465，p=0.0009），T/Wと（γ=0.3741，p=0.0063），RUVと（γ=0.4819，p=0.0005）と比較的高い相関関係が得られた．③前立腺容積との比較：前立腺容積を3群に分けて各血流速度項目と比較した．WZVを39ml以下，40～59ml，60ml以上の3群に分けて検討すると，WZVが増加するとともにRI，S/Dは高値を示す傾向にあったが有意差はみられなかった．一方，TZVを19ml以下，20～34ml，35ml以上の3群に分けて検討すると，TZVが増加するとともにEDVは低値を示し，RI，S/Dは高値を示す傾向にあり19ml以下群と35ml以上群の間で有意差がみられた．④残尿量との比較：RUVを10ml以下，11～39ml，40ml以上の3群に分けて検討すると，RUVが増加するとともにRI，S/Dは高値を示す傾向にあり10ml以下群と40ml以上群の間で有意差がみられた．
【結語】
前立腺動脈血流速度は肥大した前立腺の血行動態を反映しており，特に抵抗係数と収縮期最大血流速度／拡張期血流速度は前立腺肥大症の評価に有用であると示唆された．