Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 腎泌尿器
腎泌尿器2

(S617)

αスキャンによる早期膀胱癌の検出

Ultrasonographical detection of early urinary bladder cancer using α scan

吉田 沙也香, 矢島 義昭, 清水 瑶子, 高橋 信行, 長塩 泰貴, 佐藤 武敏

Sayaka YOSHIDA, Yoshiaki YAJIMA, Yoko SHIMIZU, Nobuyuki TAKAHASHI, Yasutaka NAGASHIO, Taketoshi SATO

1黒沢病院附属ヘルスパーククリニック検査部, 2黒沢病院附属ヘルスパーククリニック内科

1Clinical Laboratory, Health Park Clinic Kurosawa, 2Department of Internal Medicine, Health Park Clinic Kurosawa

キーワード :

腹部の超音波検査を施行する際に重要なことは,腹部全体を隈なく走査することである.健診時のルーチンの腹部走査法としてのαスキャンについては本会でも発表してきたが,上腹部の走査に続いて,大動脈を走査して骨盤腔内に至り,泌尿器・生殖器を走査するものである.今回はαスキャンによって検出された早期膀胱癌について報告する.
【対象および方法】
2011~2016年にかけての当院の人間ドック延べ受診者132,280人(8割はリピーターであり,実受診者数は40,580人)を対象としてαスキャンを施行した.当院のドックではまず採尿から始まるので,αスキャン時においては膀胱は緊満状態ではないが,直前の排尿は控えるように指導している.オプション検査として下腹部エコーを設定しているが,この場合は膀胱緊満状態で骨盤腔内を走査している.
【結果】
αスキャンによって発見された膀胱癌は9例であり,全例早期癌であった.発見部位は全例,膀胱底であり,腫瘤サイズは10~40mmであった.オプション検査である下腹部エコーでは2例の早期癌が発見され,サイズは5~6mmであった.11例中10例では尿潜血反応も陰性であった.αスキャンによる膀胱癌の発見率は実受診者数に対して9/ 40,580=0.022%であった.
【考察】
αスキャンは健診時に腹部全体を効率よく走査するために工夫されており,殊更に膀胱癌の検出を目指したものではない.そのため,今回の検討においては膀胱を緊満状態にして走査したわけではないが,22/10万人の確率で早期膀胱癌を検出できた.既報について検討すると,走査時の膀胱が緊満状態であった場合1)は検出率は0.08%,弛緩状態の場合2)は0.02%と報告されており我々の成績と一致する.膀胱弛緩状態での検出限界は10mmと考えられるが,いかにして膀胱緊満状態に近づけるかの工夫が必要である.
1)芳賀恵美子,寺沢良夫,千葉正通.検診腹部超音波検査による膀胱癌の検出.健康医学 14(1): 31~33,1999
2)福嶋啓祐,赤木公成,日隈慎一,ほか.腹部超音波集団検診5年間の成績.日本超音波医学会講演論文集 745,1993