Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 腎泌尿器
腎泌尿器2

(S616)

経会陰超音波検査による骨盤臓器脱症例の尿道の観察

Findings from transperineal ultrasonography of the female urethra in pelvic organ prolapse

中田 真木, 上島 千春

Maki NAKATA, Chiharu UESHIMA

三井記念病院産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Mitsui Memorial Hospital

キーワード :

【目的】
骨盤臓器脱には前腟区画の支持不良を呈する症例が多く,それらはしばしば下部尿路機能障害を伴う.手術治療の必要性を判定し,外科処置の成否を評価するために,尿道とその支持組織の形態的な評価手法としての経会陰超音波検査の有用性と限界について検討した.
【対象】
2016年中に当科で経会陰超音波検査による骨盤底の評価を受けた自験例を対象とした.
【方法】
経会陰超音波検査は婦人科診察時に砕石位で行い,短いムービーとボリュームデータを観察に用いた.短いムービーは,コンベックスプローブを陰唇の間にあて被検者に骨盤底のすぼめ,咳払い,いきみ動作をさせて記録した.ボリュームデータは,3D対応の経腟プローブを外尿道口付近にあて,単回スキャンモードで取り込んだ.ボリュームデータの観察には,尿道の長軸に直交する厚さ1mmの連続断面を切り出す《多断面法》を用いた.
【結果】
尿道の可動性が増大する様式には2つあり,中部尿道は固定されたままで膀胱頚部が腟内腔に向けて下降する動き(回転性下降)と,尿道が全体的に長軸に沿う方向に下降する動き(ずれ下降)が区別された.分娩に引き続いて生じた骨盤臓器脱では,しばしば高度の回転性下降を認めた.長い経過を持つ骨盤臓器脱や骨盤臓器脱が明らかになる前に腹圧性尿失禁を呈していた症例ではしばしば著明なずれ下降を認め,それらの症例では,ボリュームデータの解析で,1)尿道の断面の形状が楕円から正円に変化する,2)尿道の両側と恥骨を連絡する支持組織が乏しくなる,3)尿道を取り囲む薄い低反射領域が出現する,などの所見が見いだされた.
【結論】
動的な経会陰超音波断層像検査は,実施しやすく,実施しながら尿道のぐらつきの様態を大まかに把握するのに向いているが定量的な処理は今のところできていない.尿道と周囲のボリュームデータの解析は,やや煩雑ではあるが半定量的な評価に使用できる可能性がある.超音波所見と尿流動態検査所見との間に対応があるかどうかが次の課題である.