Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 腎泌尿器
腎泌尿器1

(S616)

造血器腫瘍による腎腫瘤性病変5症例の超音波所見

Ultrasound image of 5 cases of renal mass lesion by hematopoietic tumor

鶴岡 尚志, 畑岡 麻子, 増岡 和宏, 中山 聡

Hisashi TSURUOKA, Asako HATAOKA, Kazuhiro MASUOKA, Satoshi NAKAYAMA

1三宿病院診療技術部, 2三宿病院血液内科, 3三宿病院消化器科

1Medical Technique Section, Mishuku Hospital, 2Department of Hematology, Mishuku Hospital, 3Department of Gastroenterology, Mishuku Hospital

キーワード :

【目的】
造血器腫瘍は,リンパ節や肝,脾など複数の臓器に転移・浸潤することが知られている.腎浸潤は,経過中に指摘される他,腎浸潤による腎機能低下がこの疾患の発見の契機になることがある.今回我々は,造血器腫瘍の症例で腎腫瘤を認めた5症例について,その超音波所見を検討した.
【症例1】
80才代女性.悪性リンパ腫(以下ML).食欲不振・全身倦怠感を主訴に近医受診し,両側胸水を認めたため当院に紹介.超音波検査(以下US)では,腹腔内および後腹膜のリンパ節が多数腫大し,肝脾腫大,脾内には小型の低エコー腫瘤を多数認めた.左腎上極に42mmの類円形低エコー腫瘤を認めた.MLと診断し化学療法を開始したが,腎不全,呼吸不全を併発し死亡.
【症例2】
90才代男性.ML.悪寒・発熱で救急搬送.USにて左腎に長径200mm,形状不整で境界は明瞭な低エコー腫瘤を認めた.腫瘤はCECや脾に連続性に浸潤する所見ががあった.画像所見と病理検査でMLと診断し,化学療法によりUSで腫瘤は消失した.
【症例3】
90才代女性.ML.胃多発潰瘍性病変,全身リンパ節腫脹で発症し当院に紹介.USでは,胃体部粘膜下に低エコー腫瘤,腹腔内に多数のリンパ節腫大,肝と脾に低エコー腫瘤,右腎被膜下に48×28mmの低エコー腫瘤を認めた.化学療法を開始し,14日後には各病変は縮小し,3ヶ月後のUSで各病変は消失した.
【症例4】
70才代男性.ML.近医にて左胸水,脾腫,血小板低下を指摘され,当院外来を受診した.USで両腎に扁平な腫瘤を各1ヶ所指摘.いずれも腎皮質に付着するような形状で,右19×14mm,左30×14mmの極低エコーな腫瘤であった.腹腔内にリンパ節腫大と思われる腫瘤が多発,顕著な脾腫を認めた.
【症例5】
60才代男性.慢性リンパ性白血病(CLL).他院でCLLと診断.化学療法を施行し経過観察中の患者.今回,腎浸潤を疑い当院で化学療法を再開した.USで左腎に42×40mmの不整形,低エコーの腫瘤性病変と下腹部にリンパ節と思われる低エコー腫瘤を指摘した.化学療法にて腎腫瘤は消失,下腹部の腫瘤は増大した.
【結果と考察】
今回検討した造血器腫瘍による腎腫瘤性病変の所見を以下にまとめる.①存在部位:腎皮質側の実質から腎被膜側に突出するものが多く,片側単発4例,両側1例だった.また,CECや脾に連続性に浸潤する症例があった.②形状:類円形,扁平な腫瘤様形状,多結節癒合形状など多彩でいずれも境界は比較的明瞭.③後方エコーの増強や減衰は無かった.また,腎細胞癌で通常見られる所見とは以下の点が異なる.④内部エコー:極めて低エコーで均一なものが多い.⑤Haloや側方陰影などの腫瘤被膜の存在を示す所見がない.⑥明確な腫瘍血管がなく腫瘤内部に腎本来の血管が走行する.
断面によっては腎皮質から腫瘤が突出し,腎細胞癌などの腎腫瘍に類似した位置に現れるので鑑別には注意を要することがある.5例中3例では,腎機能低下のため造影CTが施行できず,単純CTでは腫瘤の存在は指摘したが形状を明確に描写できなかった.USでは,肝や脾での浸潤・転移腫瘤像と同様に,腎でも低~極低エコーの明瞭な腫瘤像を描出し,腫瘤被膜の存在を示す所見がないことや,腎実質内の血管が本来の走行を示すことが鑑別において有用な所見と考える.
【結論】
造血器腫瘍による腎腫瘤性病変5症例の超音波像を検討した.いずれも共通した所見があり,その中には腎細胞癌とは異なる所見があるので,鑑別は可能と考える.