Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 腎泌尿器
腎泌尿器1

(S615)

ポケット型超音波装置を用いた水腎症の評価

Evaluation of hydronephrosis using a Pocket Echo

植林 久美子, 亀田 徹, 川井 夫規子, 小堀 康之, 和貝 和子

Kumiko UEBAYASHI, Toru KAMEDA, Fukiko KAWAI, Yasuyuki KOBORI, Kazuko WAGAI

1済生会宇都宮病院超音波診断科, 2安曇野赤十字病院救急科, 3済生会宇都宮病院臨床検査技術科

1Department of Ultrasound Medicine, Saiseikai Utsunomiya Hospital, 2Department of Emergency Medicine, Red Cross Society Azumino Hospital, 3Department of Clinical Examination, Saiseikai Utsunomiya Hospital

キーワード :

【目的・始めに】
ポケット型超音波装置が診察の一環として利用可能となってきたが,腹部領域への利用に関する検討はほとんど行われていない.本来,水腎症は腎杯の拡張があるものとされるが,腎盂離開のみでも結石等の閉塞起点を認めることがしばしば経験される.今回我々は腎盂離開も評価項目にし,ポケット型超音波装置と据え置き型超音波装置の両者で水腎症の程度を評価し,ポケット型超音波装置の有用性について検討を行った.
【対象】
泌尿器科から超音波検査の依頼があった中で①から④すべてを満たす70症例とした.①20歳以上の男女,②腹痛,背部痛,背部違和感,血尿,もしくは尿管結石疑い例,③この試験の初回例,④腎臓・尿管・膀胱の手術歴がない例.
【方法】
水腎症を5段階(なし,ごく軽度,軽度,中等度,高度)で評価した.この場合,ごく軽度とは腎盂の離開は明らかだが腎杯の拡張がないもの(腎盂離開)とし,軽度,中等度,高度は従来通りの定義に沿って判定を行った.充分に経験のある検者のうちの1人(検者A)がポケット型超音波装置を用いて評価し,その結果を知らされていない他の検者(検者B)が据え置き型超音波装置で同様の評価をした.
【結果】
まず,水腎症の有無を評価した2×2表を作成した.水腎症ありの評価を軽度以上の症例とした場合(表1-1),κ=0.76であり,水腎症ありの評価をごく軽度以上の症例とした場合(表1-2),κ=0.52と低下した.次に,水腎症の程度評価に関して,ごく軽度の症例を水腎症なしとした4段階の評価で4×4表を作成したところ,weightedκ=0.59であった.4×4表での不一致例の内訳は過大評価12例,過小評価3例であった.
【考察】
ポケット型超音波装置は水腎症の有無を判断する上で,従来通り腎杯の拡張を有する例では充分に有用である.腎盂離開のみの場合は一致度が低下し,過大評価例が多くあった.据え置き型超音波装置で水腎症なしと評価したものを,ポケット型超音波装置で軽度ありと評価した6例の画像を比較したところ,傍腎盂嚢胞,腎外腎盂,血管との判別が困難であった例が各1例,腎洞内脂肪腫様で判断に難渋した例が1例あり,その他2例は検者間での評価の差が関係していると考えた.
【結語】
ポケット型超音波装置で水腎症を十分に評価できると考える.