Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 腎泌尿器
腎泌尿器1

(S615)

shear wave elastographyにおける腎臓内の動きの観察

Observation of displacement in kidneys induced by push pulse during shear wave elastography

金山 侑子, 神山 直久, 橋本 正弘, 大熊 潔, 陣崎 雅弘

Yuko KANAYAMA, Naohisa KAMIYAMA, Masahiro HASHIMOTO, Kiyoshi OHKUMA, Masahiro JINZAKI

1GEヘルスケア・ジャパン株式会社超音波製品開発部, 2慶応義塾大学医学部放射線科(診断)

1Ultrasound General Imaging, GE Healthcare Japan Corporation, 2Department of Radiology, Keio University School of Medicine

キーワード :

【目的】
Shear wave elastography(SWE)は,主に肝線維化の定量評価を目的として普及しつつあり,他臓器への応用も期待されている.腎臓に対しても,腫瘍の性状診断や線維化の定量評価のためにSWEを適用した試みが報告されている[1]が,我々は腎臓では必ずしも適切なSWE画像が得られないことを経験してきた.この理由を探るため,腎臓におけるせん断波の発生と伝播の様子を調査した.
【対象と方法】
装置はLOGIQ E9(GE Healthcare),探触子はC1-6-Dを使用.被検体は,摘出ブタ腎臓,ボランティア2名(A,B)の肝臓・腎臓,ファントム(CIRS Model 049A).ROIの左右2箇所でプッシュパルス(PP)を照射してSWEを撮像する際にIQデータを取得し,速度分布の時間変化を解析した.また,同時刻同位置のカラードプラ画像を取得し血流の様子を観察した.ここで,ボランティアおよびファントムにおいては,状況を単純にするため,PPをROI中央の1箇所に固定しても同様の解析を行った.
【結果】
ブタ腎臓,A,Bの肝臓,ファントムでは,SWE画像は均一で,速度分布の時間変化からはせん断波が左右に伝播する様子が見られた.一方,腎臓は,ボランティアAでは均一なSWE画像が得られることが多いが,Bでは近接する2点間の動きの類似度を示すquality値が低くSWE画像が得られない場合が散見された.PP照射位置の変位を見ると,ファントム,肝臓A,Bおよび腎臓AではPPに対応する中央領域の一方向への動きが見られたのに対し,腎臓BにおいてはPP直後にROI内全体が変位し,顕著な空間的ばらつきが見られた(図).カラードプラ画像では,ブタ腎臓,肝臓A,Bおよびファントムでは血流シグナルがほぼ見られなかったが,腎臓A,Bでは血流シグナルがほぼ全域に見られた.
【考察】
生体腎臓で硬さ画像が得られない場合,明瞭なせん断波が発生しておらず,伝播も見られない.これは腎臓の豊富な血流が一つの要因となっていると考えられる.ただし,血流シグナルが豊富でもせん断波の伝播が見られた例もあり,この差異をもたらす要因に関しては更なる検討が必要である.腎臓のせん断波速度は,線維化程度よりも血流量が影響しているとする報告[2]もあり,今回の結果も血流量や血管内圧の違いが影響している可能性がある.
【参考文献】
[1]Samir et al. BMC Nephrology 2015;16:119
[2]Asano et al. J Ultrasound Med. 2014;33:793-801