Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 腎泌尿器
腎泌尿器1

(S614)

腎機能予測推測における腹部超音波による腎臓スクリーニング検査の有用性

Usefulness of Kidney Screening with Transabdominal Ultrasound in the Prediction of Renal Function

笹木 優賢, 廣岡 芳樹, 川嶋 啓揮, 大野 栄三郎, 石川 卓哉, 河合 学, 松原 宏紀, 竹下 享典, 中村 正直, 後藤 秀実

Yutaka SASAKI, Yoshiki HIROOKA, Hiroki KAWASHIMA, Eizaburo OHNO, Takuya ISHIKAWA, Manabu KAWAI, Hiroki MATSUBARA, Kyosuke TAKESHITA, Masanao NAKAMURA, Hidemi GOTO

1名古屋大学医学部附属病院医療技術部臨床検査部門, 2名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部, 3名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学, 4名古屋大学医学部附属病院検査部

1Department of Medical Technique, Nagoya University Hospital, 2Department of Endoscopy, Nagoya University Hospital, 3Department of Gastroenterology and Hepatology, Nagoya University Graduate School of Medicine, 4Department of Clinical Laboratory, Nagoya University Hospital

キーワード :

【目的・対象】
慢性腎不全では腎皮質のエコー輝度が腎機能低下と共に上昇し,かつ腎皮質の菲薄化と腎全体の萎縮が認められる.肝臓と腎皮質のエコー輝度を比較することで腎機能をある程度推測することが可能であるが,脂肪肝を合併した場合などは判定が困難となる場合がある.今回,我々は腹部超音波検査時の腎臓スクリーニングで得られた項目と腎機能(推定糸球体濾過量:eGFR)との関係について検討し,腎機能の推測が可能であるか検討した.対象は2016年4月~9月に腹部超音波検査時にBモード法にて腎臓の長軸径,短軸径,皮質径,Central Echo Complex(CEC)径,パルスドプラ法による葉間動脈の末梢血管抵抗値(pulsatility index:PI,resistance index:RI)を測定し,かつeGFRを評価可能であった256名.平均年齢:62.0±14.4歳(21-90歳),男女比=125:131であった.
【方法・結果】
eGFRと腎臓の長軸径,短軸径,皮質径,CEC径,皮質径/長軸径比,皮質径/短軸径比,皮質径/CEC径比,葉間動脈のPI値,RI値との相関性の検討を行った.また,それぞれの項目についてROC曲線を求め,曲線下面積が最も優れた項目についてCKDステージG3a以上であるeGFR 60mL/min/1.73m2未満を診断するcut off値の設定を行った.
それぞれの項目とeGFRの相関は右腎で長軸径Rs=0.294,短軸径Rs=0.288,皮質径Rs=0.379,皮質径/長軸径比Rs=0.235,皮質径/短軸径比Rs=0.230,皮質径/CEC径比Rs=0.287,PI Rs=-0.276,RI Rs=-0.271,左腎で長軸径Rs=0.360,短軸径Rs=0.249,皮質径Rs=0.350,皮質径/長軸径比Rs=0.153,皮質径/短軸径比Rs=0.235,皮質径/CEC径比Rs=0.288,PI Rs=-0.265,RI Rs=-0.229(いずれもP<0.001)であり,右腎の皮質径と最も良く相関していた.一方で右CEC径Rs=-0.027(P=0.668),左CEC径Rs=-0.067(P=0.287)とでは相関関係を認めなかった.それぞれの項目についてROC曲線より曲線下面積を求めたところ,左腎皮質径0.720で最も優れており,次いで右腎皮質径0.717であった.左腎皮質径のcut off値を17.55mmと設定するとCKDステージG3a以上の診断における感度65.2%,特異度70.0%であり,右腎皮質径cut off値を18.55mmとすると感度69.7%,特異度63.2%であった.
【考察・結論】
今回の検討では右腎の皮質径がeGFRと最もよく相関しており,腎機能の低下とともに皮質径が萎縮していくと考えられた.一方でCEC径は両側共に腎機能との相関関係は認めなかった.腎臓の萎縮には加齢によるネフロンの減少と腎臓内小動脈硬化が関連しているとされているが,皮質径の萎縮はこれらを反映しているものと考えられた.
腎皮質径は腎機能を最もよく反映しており,腹部超音波検査時には腎皮質径を測定することで腎機能を推測できる可能性がある.