Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 腎泌尿器
腎泌尿器1

(S614)

超音波による副腎描出法の標準化

Standarization of sonographic evaluation for adrenal glands

水関 清

Kiyoshi MIZUSEKI

市立函館病院総合診療科

General Medicine, Hakodate Municipal Hospital

キーワード :

ルーチン検査として行う超音波検査の一環として副腎を描出することは,新生児・乳児を除いて一般的ではない.腹部超音波検査の標準化と精度管理を目指して,超音波医学会・消化器がん検診学会・人間ドック学会が合同でまとめた「腹部超音波健診判定 マニュアル」をみても,標準的走査法でカバーする臓器は,肝・胆・膵・脾・腎・腹部大動脈が対象とされ,副腎・膀胱・子宮・卵巣・前立腺は,正式な対象臓器とはされておらず,有所見時のみの記録がすすめられているにすぎない.
1990年代後半から超音波診断装置のデジタル化が急速に進んだ結果,特に体の深部にある臓器の描出能が大幅に向上することとなった.その恩恵を受けた臓器のひとつが副腎であり,深部減衰の影響や,周囲組織との間でのコントラストのつきにくさといった画像化する上での難点を,一定程度克服するに至った.
その描出手技については諸説ある.例えば右副腎では,肋弓下走査で腎上極にむかって左右方向に探触子を振りながらの連続的な走査を勧めるものから,右肋間走査からの縦断像を勧めるものまで,さまざまである.筆者の方法を,以下に紹介したい.
まず,画像条件は低めのゲインとし,焦点領域は,想定される副腎描出位置の下縁に置く.検査体位は,右副腎走査時には左半側臥位,左副腎走査時には右半側臥位をとる.
描出するうえでのランドマークとなるものは,左右の横隔膜脚と下大静脈である.右副腎は中腋窩線上での肋間からのアプローチで,肝・下大静脈・右横隔膜脚で囲まれた領域を狙う.線状の低エコー域として描出される右横隔膜脚の腹側方に,まず描出されてくるのが,右副腎の前下縁から後下縁にかけての縦断像である.走査断面に下大静脈が含まれている場合には,これをエコーウィンドウとして積極的に活用すると,さらに明瞭な画像が得られる.
正常の右副腎のサイズは上下長が40mm前後,厚さが3~5mmの薄い実質組織で,前面・腎面・後面の三面からなるY字状で,押しつぶした三角形のような形状をとる.下大静脈に接しているのが副腎の前面,図の右下方に凹となっているのが腎面,図の左方向に凹となっているのが後面である.
右に比べると,左副腎の描出は難しい.左腎上極の内側,脾臓と横隔膜脚の間の左副腎領域を肋間から狙うのは同じであるが,左の場合は右の場合より,より後方の後腋窩線上からアプローチする.意識としては,CT画像の冠状断のようなイメージで,肋間にこだわらず縦にあてた探触子を前後方向にずらしながら観察,時には腎をエコーウィンドウとする.走査断面と本来の形状の関係で,右よりはずんぐりした形で,三角形ないし楕円形の形をとることが多い.後腋窩線上からのアプローチで描出が困難な場合には,体位を仰臥位に戻して,脾をエコーウィンドウとして腎上極内側を狙うと描出できることもある.
多数の臓器を系統的に走査して,大まかに疾患の有無を把握することは,放射線被ばくのない超音波検査の利点そのものである.上記マニュアルでは参考所見として扱われている副腎についても,今後は統一した操作法を実施基準としてその描出率向上に努め,標準的な超音波検査対象臓器に含まれることが望ましい.
本発表において,これらの手技上の工夫を行うことによる描出率の向上について検討したので動画等を供覧しつつ報告する.