Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 甲状腺(JABTS)
診断

(S611)

良性甲状腺疾患における甲状腺周囲リンパ節の臨床的意義

Significance of perithyroidal lymph nodes in benign thyroid diseases

太田 智行, 西岡 真樹子, 中田 典生

Tomoyuki OHTA, Makiko NISHIOKA, Norio NAKATA

東京慈恵会医科大学附属病院放射線医学講座

Radiology Depertment, Jikei University School of Medicine Hospital

キーワード :

【目的】
良性甲状腺疾患におけるultrasonographically detectable perithyroidal lymph nodes(PTLNs)の検出率を調査し,その臨床的意義を検討する.
【対象と方法】
連続症例から担癌患者,癌の既往,高カルシウム血症や腎不全患者を除いた108人の良性甲状腺疾患が母集団となり,腺腫様甲状腺腫・腺腫様結節群(n=36),橋本病群(n=33),亜急性甲状腺炎(n=6),無痛性甲状腺炎(n=9),バセドウ病(n=14),病因不明甲状腺機能低下症(n=10)に分類.これらのPTLN検出率を比較した.また,甲状腺容積,甲状腺実質エコーレベル(grade 1-3),抗TPO抗体(TPOAb),抗サイログロブリン抗体(TgAb),TSHレセプター抗体TRAb(第三世代)とPTLN検出率との関係も調査した.
【結果】
PTLN陽性率は,橋本病群(69.7%),亜急性甲状腺炎群(83.8%),無痛性甲状腺炎群(77.8%),バセドウ病(35.7%)であった.上記群の検出率は腺腫様甲状腺腫/腺腫様結節(5.6%),病因不明甲状腺機能低下症(0%)よりも有意に高かった(P<0.05).また,PTLN陽性率はTgAb and/orTPOAb陽性の場合(P<0.01),甲状腺実質がより低輝度の場合で(P<0.01)有意に高率であった.
【考察】
PTLNは甲状腺実質に炎症を伴う疾患およびバセドウ病で高率に検出されるが,その他甲状腺疾患ではあまり観察されない.バセドウ病を含め,PTLNは甲状腺実質に炎症があるかどうかの鑑別点になると考えられる.また,TgAb and/or TPOAbはPTLNだけでなく間接的に甲状腺実質エコーレベルの低下とも関連していると考えられる.TgAb and/or TPOAbは,橋本病だけでなく,バセドウ病を含めた甲状腺に炎症を来す疾患群で広く,炎症の増悪因子になっている可能性があると思われた.
【結論】
PTLNは甲状腺実質の炎症の有無を知らせる指標となり得る.