Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 甲状腺(JABTS)
診断

(S609)

転移性甲状腺腫瘍の超音波像

Ultrasonographic findings of metastatic thyroid tumor

宮本 智子, 福島 光浩, 太田 寿, 藪田 智範, 小林 薫, 廣川 満良, 中村 浩淑, 宮内 昭

Noriko MIYAMOTO, Mitsuhiro FUKUSHIMA, Hisashi OTA, Tomonori YABUTA, Kaoru KOBAYASHI, Mitsuyoshi HIROKAWA, Hirotoshi NAKAMURA, Akira MIYAUCHI

1隈病院臨床検査科, 2隈病院外科, 3隈病院病理診断科, 4隈病院内科

1Clinical Laboratory, Kuma Hospital, 2Surgery, Kuma Hospital, 3Pathology, Kuma Hospital, 4Internal Medicine, Kuma Hospital

キーワード :

【はじめに】
転移性甲状腺腫瘍は剖検例では比較的頻度が高いが,臨床的に診断される症例は稀である.
原発巣は,剖検例では乳癌と肺癌が多く,臨床例では腎癌,乳癌,肺癌,消化器癌の報告が多い.転移の機序には,血行性転移とリンパ行性転移があり,血行性転移は腎,乳腺,肺,消化管などの癌に多く,リンパ行性転移は乳腺,肺,胃などの癌でみられる.
転移性甲状腺腫瘍は超音波検査で充実性結節を示すタイプ(結節型)と,明らかな結節を示さず甲状腺全体あるいは広汎にびまん性に広がるタイプ(びまん型)があるとされ,結節型は血行性転移を,びまん型はリンパ行性転移を反映していると考えられている.
稀に他臓器の癌が甲状腺の濾胞腺腫,濾胞癌,濾胞型乳頭癌などの腫瘍内に転移する場合もある.
一般に転移性甲状腺腫瘍の予後は不良で,平均生存期間は15~24ヶ月と報告されている.
転移性甲状腺腫瘍は,超音波検査での診断方法が確立されているわけではない.
当院で経験した転移性甲状腺腫瘍についてその特徴を検討した.
【対象】
2005年1月から2016年11月までに当院で細胞診または手術を施行され,転移性甲状腺腫瘍と診断された34症例(男性16例女性18例,年齢の中央値は69.8±7.3歳)を対象とした.
原発臓器の内訳は腎癌14例,肺癌8例,食道癌3例,肝臓癌3例,乳癌,大腸癌,顎下腺癌,それぞれ1例ずつ,原発不明3例(扁平上皮癌)であった.
【結果】
34症例中22症例が結節型,12症例がびまん型であった.11症例(結節型3症例,びまん型8症例)では周囲の頚部リンパ節にも転移していた.
腎癌甲状腺転移は14例中13例が結節型で,肺癌は8例中5例がびまん型,食道癌は3例全例がびまん型であり,ほとんどが転移の機序と一致していた.
結節型では濾胞性腫瘍や乳頭癌との鑑別が困難だった症例が多く,びまん型では慢性甲状腺炎や悪性リンパ腫との鑑別が困難であった.
【考察】
転移性甲状腺腫瘍は,超音波検査での診断方法が確立されていないため診断に難渋する場合も多い.しかし,診断が困難だった症例も,他臓器癌の既往がわかってから見直してみると,転移性甲状腺腫瘍と診断できる症例もあった.何らかの特徴を示すことができれば今後の診断に役立つと思われる.他臓器での癌治療の既往がある患者は,転移性甲状腺腫瘍の可能性も念頭において検査する必要がある.