Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 甲状腺(JABTS)
診断

(S608)

地域住民の頸動脈硬化健診における甲状腺超音波所見の頻度

Frequency of thyroid ultrasound findings in carotid arteriosclerosis screening of local general population

山口 泉, 佐藤 晋平, 門田 耕一郎, 川尻 真也, 清水 悠路, 前田 隆浩, 林田 直美

Izumi YAMAGUCHI, Shimpei SATO, Koichiro KADOTA, Sin-Ya KAWASHIRI, Yuji SHIMIZU, Takahiro MAEDA, Naomi HAYASHIDA

1長崎大学原爆後障害医療研究所放射線・環境健康影響共同研究推進センター共同研究推進部, 2長崎大学大学院医歯薬学総合研究科先進予防医学講座地域医療学分野

1Division of Strategic Collaborative Research, Center for Promotion of Collaborative Research on Radiation and Environment Health Effects, Atomic Bomb Disease Institute, Nagasaki University, 2Department of Community Medicine, Nagasaki University Graduate School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
東日本大震災時の福島第一原子力発電所事故後,福島県では小児を対象とした甲状腺超音波検査が行われ,47.9%に嚢胞性病変,1.4%に結節性病変が認められている.福島県以外の3県(青森,山梨,長崎)で行われた調査でも,小児の甲状腺超音波検査での所見頻度は福島県と同等であることが明らかとなった.
一方,成人においての甲状腺スクリーニングは触診が主であり,人間ドックや集団検診で頸部超音波検査が行われることがあっても偶発的に発見される甲状腺異常の頻度に関する報告は少ない.特に,一般住民における超音波検査での甲状腺所見の頻度及びその意義については十分なエビデンスは得られていないと考えられる.
そこで我々は一般住民に対する頸動脈超音波検査を用いた動脈硬化検診時に偶発的に発見される甲状腺所見の頻度およびその所見内容を明らかにすることを目的として本研究を行った.
【対象と方法】
対象は長崎県北部地域における住民検診で動脈硬化健診を受診した40-70歳の成人1,912人(男性698人,女性1,214人)とした.使用機器はLOGIQ Book,6.3MHz probe(8L-RS)を用いた.検討項目は甲状腺所見の頻度(嚢胞,結節)及び性別,年齢との関連を明らかにすることとした.
【結果】
受診者全体の平均年齢は60.4±9.44歳で,男性62歳,女性59.4歳であった.甲状腺有所見者は男性の40.7%,女性の59.5%で,甲状腺嚢胞は全体の32.9%,結節は19.7%に認めた.サイズごとの頻度は嚢胞では5mm以下が66%と最も多く,5mm-10mmで28%,10mm以上が6%であった.結節は5mm以下が15%,5-10mmが47%,10mm以上が38%で5mmを超える結節の頻度が高かった.性別との関連については,全体として嚢胞が男性の26.4%,女性の36.7%,結節が男性の14.6%,女性の22.9%に認められ,嚢胞,結節のいずれにおいても有意に女性の有所見者の頻度が高かった.サイズごとの比較では10mm以下の嚢胞及び5mm以上の結節において有意に女性で頻度が高かった.また,年齢でみると嚢胞は40歳代で21.5%,50歳代で31.3%,60歳代で36.7%,70歳代で39.2%,結節は40歳代で13.6%,50歳代で17.8%,60歳代で23.4%,70歳代で19.4%に認められ,いずれも有意に高齢者での頻度が高かった.サイズごと比較では10mm以下の嚢胞,5mm以下の結節,10mm以上の結節において高齢になる程有意に頻度が高かった.
【まとめ】
福島県民健康調査で判明した小児の頻度と比較し,成人は 嚢胞の頻度は低いが,結節の頻度が高かった.成人の嚢胞は小児よりもサイズが大きく,一方結節はサイズが小さいものが多かった.
日本における一般住民に対する甲状腺超音波を用いたスクリーニング検査の報告は少ないため今回の研究結果は日本人一般成人の甲状腺超音波検査所見の頻度を知るうえで有用と思われる.